【東京V】城福監督「この試合の選手選考は本当に頭を悩めた」。J1昇格、森田晃樹の「秘話」も明かす
城福浩監督。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
「彼も大きな選択肢を迫られた一人でした。ただ彼は残る決断をしました」
[J1参入PO 決勝]東京V 1–1 清水/2023年12月2日14:00/国立競技場
J1参入プレーオフ決勝、東京ヴェルディ(シーズン3位)が染野唯月の後半アディショナルタイムのPK弾で、清水エスパルス(4位)と1-1で引き分け、規定によりレギュラーシーズンを上位で終えたアドバンテージにより、2024シーズンの16年ぶりとなるJ1昇格を決めた。
城福浩監督は試合後の記者会見で、クラブが16年間積み重ねてきた悔しさ……それを晴らすためには、自身にとってJ1昇格だけが使命であり、それができなければ「なぜ、ここに何をしに来たんだと言われる覚悟を持って来ました」と語った。
一度2021年冬に東京Vからオファーを受けた時には断っていた。そして2022年夏に再び話をもらった時、サッカー界とJリーグを盛り上げるためには「東京ダービーを復活させたい。ヴェルディのあるべき姿にしたい」と引き受けたという。
そしてこのプレーオフ決勝の舞台に辿り着いた。
「この試合の選手選考は本当に頭を悩めました」
そのように城福監督は昇格PO準決勝のジェフ千葉戦からの1週間のチーム内の競争について噛み締めるように語った。指揮官は「全員が目を輝かせて取り組んでくれていた」と言う。
その考え抜いた「選考」が最後に結実したということだ。
「最後1分になればパワープレーもあったかもしれません。しかし辛抱強くピッチの幅を使って、ハイラインから即時奪回で人数をかけてペナルティエリア内に攻める。そこにフォーカスし、そういうメンバーを選んでピッチに送り出しました。それをやり抜いたことで、最後にPKを得られたと思います」
また痛恨の先制点となるPKを献上した森田晃樹だが、城福監督は全幅の信頼を置いていた。交代させることなく90分間フル出場し、それが最後のゴールにも実を結んだ。
実はこのオフ、他クラブからのオファーもあったと指揮官は秘話を明かした。
「このチームは毎年主力が流出しています。彼も大きな選択肢を迫られた一人でした。ただ彼は残る決断をしました。彼のキャラクターからしたらキャプテンに任命されることは考えられなかった。一緒に葛藤しもがき苦しんでここまで来ました。それだけに言葉にできないものがあります」
また、染野唯月は鹿島アントラーズから昨夏に続き二度目のレンタルで補強した。この半年間で大きな存在となり、この“J1昇格決定ゴール”をもたらした。
城福監督は若いチームではあるが、支えているのはベテランの選手たちであると強調した。
「このチームは非常に若いチームです。可能性を持った選手たちが、出場機会を求めてきています。ただ、試合に出る自覚を持つようになったのはベテランの姿勢があってです。この試合に向けた練習で、誰しもが目を輝かして取り組み、ベテランも体を張っていました。でも18人しかメンバーに入れません。誰もがそこに入りたいのだと、それを強く感じてきました。ただ試合に出ることで成長できるわけではない。このチームでは、ベテランは非常に大きな存在だったと思います」
指揮官は東京Vを指揮する決断を下した、もう一つの理由に現在62歳という年齢も挙げた。「もう第4コーナーに差しかったのではなく、その先に完全に入っています」。しかし「でも、まだ入ったところでバトンをもらったと思っています」と、むしろ、ここからが“楽しみな”ラストスパートであり全力を懸ける覚悟だ。
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5万3000人を超す観客がスタンドを埋めた国立競技場。「ヴェルディはここから優勝を目指すチームになっていく。今日がその一歩目です」と城福監督がヒーローインタビューで語ると、「ジョウフク・ヴェルディ!」の大きく熱いエールがスタジアムに響きわたった。