【J1昇格PO】エスパ髙橋ファウル、解説者「VARが入らなかった」は『間違い』。東京V染野PK、むしろ主審の好ジャッジ
2023シーズン開幕前、日本サッカー協会(JFA)が公開した、VARルームでのオフサイドライン3D化運用のトレーニングの様子。(C)SAKANOWA
逆に見逃されていた場合、主審がビデオで確認するOFRになっていた可能性も。
[J1参入PO 決勝]東京V 1–1 清水/2023年12月2日14:00/国立競技場
※規定によりレギュラーシーズン上位の東京VがJ1昇格
J1参入プレーオフ決勝、東京ヴェルディ(シーズン3位)が90+6分の染野唯月のPK弾で、清水エスパルス(4位)と1-1で引き分けた。規定により2024シーズン、16年ぶりとなるJ1昇格を決めた。
後半アディショナルタイム「8分」と提示されての90+3分、後方からのフィードにペナルティエリア内の右に抜け出した染野が、やや後方からの高橋祐治のスライディングタックルを受けて、これがファウルとなってPKを獲得。染野自身がPKを決めて、『J1昇格決定弾』となった。
この得点が決まったあと、DAZNでは横浜F・マリノスやジュビロ磐田で活躍した元選手の解説者が「VARは入っていなかったんですかね?」と、VARがこの場面をチェックしていなかったのではないかというニュアンスで指摘した。しかし、これは大きな間違いである。
Jリーグや日本サッカー協会は「VARについて」公式ホームページなどで詳しく説明している。得点シーンについては、全てVARはチェックしている。
そのうえで主審とVARルームで「はっきりとした明白は間違い(重大な見落とし)」がないと確認できたため、介入はしなかったということだ。
DAZNでは得点シーン直後、次のように解説者と実況のやりとりがあった。
解説者「高橋祐治と染野の接触のPKのところは、VARは入っていなかったんですかね?」
実況「もちろんチェックはしているんだと思いますが……」
解説者「(国立競技場の電光掲示板での)表示は出ていなかったような気がしたんですが……」
実況「介入はしなかったということですかね」
改めてだが、VARが使われるのは、次の4つの事象に限定される。
◎「得点かどうか?」
◎「PKかどうか?」
◎「退場かどうか?」(2枚目のイエローカードは対象外)
◎「警告・退場の人間違い」
要するに、ゴールシーンと得点に関わる場面全て、そして退場、カードの間違いのみ。コーナーキックやスローインのどちらがボールを出したか、さらには得点に関わらないファウルの判定は対象外なので覆らない。
今回は「PKかどうか」であり、VARが発動した対象である。この試合のVARルーム(谷本涼VAR、 渡辺康太アシスタントVAR。さらにビデオを扱う補助的なオペレーターもいる)は、攻撃の始点となるAPP(アタッキング・ポゼッション・フェイズ)から池内明彦主審がPKと判定するまでの一連を全てスローモーションを含めチェックしている。
このシーンであれば、まず東京Vが清水からボールを奪い切った守備→攻撃の切り替えのところでファウルがなかったか。さらに染野らのオフサイドはなかったか。そしてPKかどうか。VARはビデオでしらみつぶしに細かく確認し、クリア(問題なし)にしているのだ。
PK判定となった二人の接触では、染野がよりマイボールにしようと出した左足に、髙橋のタックルが先に触れ、そのあとボールを蹴り出しているのが分かる。その「左足へのタックル」を池内主審が目視したうえで、ファウルと判断したことを、VARと交信して確認。ビデオを見たVARは主審の下した判定に「重大な見落とし」はないと判断したわけだ。
そのため「VARオンリーレビュー」でチェックオーバーとなり、主審がビデオをチェックする「OFR(オン・フィールド・レビュー)」は実施されなかった。
むしろ、もしも髙橋のタックルが染野の左足に先に触れているのを、主審が確認できず「ノーファウル」と判断していた場合、VARが介入し、OFRを推奨していた可能性は大いにあり得る(その行程を経て、主審によってはノーファウルとしていた場合もあり得るが……今回はファウルが妥当だったと言えそうだ)。
清水としては、髙橋のタックルはあくまでもボールに向かっている正当なものだと解せないかもしれない。ただ、そのランニングからのポジショニングを含め、接触を見逃さなかった主審の好ジャッジであったのもまた確かだ。
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改めてになるが、得点シーンやPKの有無については、VARは全てチェックしている。確かに「チェック」や「確認」と「介入」はやや分かりづらさはあるものの、“重大な見落とし”があると思われる時や複数の確認が必要なシチュエーションでは、VARが一旦「介入」するということだ。