×

「Kリーグの年俸はJリーグよりはるかに高い」米国メディアが日本の欧州人材流出を分析

三笘薫。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

英語の能力も判断基準の一つに。

 アメリカメディア『ジ・アスレティック』は1月19日、「アジアでのスカウティング:韓国、ポステコグルー、そして日本がなぜサッカー界で『最も価値ある』市場になってきたのか、その理由とは?」と題したレポートを掲載した。ベルギー1部シント=トロイデンVVの立石敬之CEOのこれまでの欧州挑戦に関する話とともに、欧州サイドがどのように日本市場を分析しているのかを詳しく考察している。

 日本人選手の特に若手の欧州流出が続く。2002年の日韓ワールドカップ(W杯)、2006年のドイツW杯後あたり、欧州トップリーグでプレーする選手の数が増えるべきだという声が上がり、その”理想”の状況には近づきつつある。一方、現在プレミアリーグ勢である三笘薫、冨安健洋、遠藤航はいずれもベルギーでプレー経験がある。一度日本ほどの規模ではないリーグを経由し、そこで欧州の生活にも馴染めるのか“テスト期間”を経て、5大リーグに向かうという傾向がさらに強まっている。

 そのためJリーグで主力として活躍した10代や20代前半の選手はすぐさま欧州に渡ってしまう状況が続き、その波はJ2にも及びつつある。日本代表クラスにあるが日本での戦いを選択した選手をしっかり補強しJ1リーグを制したヴィッセル神戸の例はあるものの、Jリーグの人材不足は加速度的に進み、“顔”と呼べる選手が見当たらないチームも増えているのが現状だ。

 今回のレポートでは、日本のほうが、韓国以上に欧州移籍が活発だとレポート。その理由として、「韓国が日本ほど盛んな市場にならない要因は二つ。一つがKリーグの平均年俸のほうがJリーグよるはるかに高いこと。もう一つが、これはそこまで大きくないが26歳までに課される兵役があることだ」という。つまり、Jリーグの若手選手の薄給を、海外流出の要因になっていると見ている。

 ちなみにKリーグの発表する、K1リーグの2022年の平均年俸は約2800万円、韓国人選手は2400万円。トップクラブである蔚山現代は5600万円、全北現代モータースは4800万円、済州ユナイテッドは3700万円という。

 ベルギーのスカウトなどは、日本人選手を獲得する際、選手の英語能力も見極めの一つとして見ているという。また一方、イングランド・プレミアリーグの多くのクラブは基本的に日本や韓国の市場を直接チェックしていないという。育成年代の代表チームでのスカウティング、そして一番は提携クラブとの情報共有が主になっている。

 ただし、例えば横浜F・マリノスも加わるシティ・グループは全世界にスカウト網を張り巡らせていて、16-21歳の選手がトップチームの出場500分を超えるとデータベースのその名前が点灯し、すぐスカウトスタッフ一人が付いてチェック。ネットワークにあるクラブの中で選手を追跡していくべきかをすぐさま精査しているそうだ。

 そして何よりアンジェ・ポステコグルー(現トッテナム・ホットスパーFC)によるセルティックFCでの古橋亨梧、前田大然、旗手怜央らの獲得による成功によって、イギリスでの日本人選手を見る目は変わったという。また、欧州全体で需要の増すパスセンスのあるセンターバックタイプが、日本に豊富である点も注目を集めているそうだ。

関連記事>>【日本代表】伊東純也が中村敬斗にヒヤヒヤする「ヨーロッパ人っぽい」ところとは!?

 イギリスのEU離脱によって外国籍選手へのビザ発給条件も緩和された。そのあたりも今後はより影響が出てきそうだと展望している。

Ads

Ads