「サポーターの目は死んでいなかった」苦悩する横浜FM喜田拓也が胸を熱くさせた三ッ沢の情景
横浜F・マリノスのサポーター。(C)SAKANOWA
ゴールを決めたものの天皇杯敗退。できたこと、できなかったこと――現実を受け止めつつ冷静に振り返っていった。
[天皇杯 4回戦] 横浜FM 2-3 仙台/2018年8月22日/ニッパツ三ツ沢球技場
横浜F・マリノスのMF喜田拓也は敗れた天皇杯4回戦のベガルタ仙台戦後、自問自答するように試合を振り返っていった。冷静に、できたこと、できなかったことを整理して、天皇杯敗退という現実を受け止めつつも、悲観ばかりの内容ではなかったと前を向こうと努めた。
「サッカー的にはポジティブな面もたくさん見られました。ただ結果が出ていないので、そこに関しては本当に悔しさしかありません。
天皇杯は一発勝負。負けたら終わりでしたから、チームメイトやスタッフに申し訳なく思います。もちろん、そう言って済む問題ではありませんが……悔しいです。
それでも、ボールを運ぶところでの手応えはありました。負けたとはいえ、そこの『本質』は見るべきで、負けた中にもそういったプラスの要素はあった。負けが込むと、そこを見失いがちになるので、何ができて、何ができなかったのかを振り返る必要はあります。もちろん、結果に対する貪欲さこそ忘れてはいけませんが」
49分、一時は同点に追いついた喜田のゴールは、ある意味、一つの理想と言える形から生まれた。まず中央で組み立てて相手を引き寄せてサイドへ展開。再び相手をサイドへ引っ張り出したところでクロスを中央に入れて、そのこぼれ球を喜田がねじ込んだ。ピッチ中央で食いつかせ、サイドを使って、再びゴール前で勝負――ボランチの喜田が”そこにいた”ことを含め、横浜FMにとって非常に意味ある一撃だったと言えた。
「中央のバリエーションも増えて、そこへの手応えはあります。もちろん後半は相手にワンチャン(石原直樹の2点目のボレー)、あれだけで決められた。そこにも絶対に理由はあるはずです。修正して結果を出すしかない。マリノスの誇りをもって戦いたい」
この日の会場は、ニッパツ三ッ沢球技場。観客数は5,977人と決して多くなかったものの、両チームの熱いサポーターが、心のこもった声援を選手たちに送り続けた。
「今日に限らず、サポーターの方たちは『信じてくれている』という形で声援と後押しする覚悟を持って接してくれていて、選手として感じる部分は多々あります。そこに甘えず、結果を残さないといけない。
それに……、スタンドを見ると、サポーターの方の目は死んでいなかった。
やっている自分たちが、下を向くわけには絶対にいかない。そういう自分たちを信じてくれるみんなの想いを無駄にすることだけは絶対にしてはいけない。
まず、やっている自分たちが乗り越えていかなければいけない壁がある。苦しいのは間違いないが、何とかして、絆をもってこの状況打開して乗り越えていきたい」
喜田はそのように熱く語った。
横浜FMは26日、ヴィッセル神戸とアウェーで対戦する。現在、リーグ3連敗中。8月は一度も公式戦で勝てていない。トリコロールのダイナモは、サポーターへ歓喜を届ける――その絆をゴールと勝利につなげるために、全身全霊をかけて戦う。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI