19歳宮田笙子のパリ五輪辞退、若狭弁護士『18歳成人の意味』など異なる視点から論じる。「処分は間違っている」と体操協会を批判
昨年ベルギーで開催された体操世界選手権での宮田笙子。(Photo by Matthias Hangst/Getty Images)
ユーチューブチャンネルで問題提起、「本来、法律違反、規則違反に対し、自分の職歴に照らすと厳しい見方をすることが多いです。しかし…」。
日本体操協会が体操競技のパリ・オリンピック出場を決めていた19歳の宮田笙子(Shoko MIYATA)が喫煙・飲酒をしていたとして、本人と話し合い五輪への出場を「辞退」を決めた問題で、弁護士の若狭勝氏が7月26日、ユーチューブチャンネル「弁護士 若狭勝のニュース塾」で、「18歳成人の意味」など、これまで出ていた意見とは少し異なる視点からこの問題を論じた。
日本体操協会の行動規範では、日本代表として活動する場での飲酒・喫煙を禁止すると定められている。そのため宮田は、この規約違反に該当する。
ただし若狭弁護士は、オリンピックへの出場辞退は、協会側からあまりに一方的な押し付けで、決定には「反対です」という立場を示した。
「本来、法律違反や規則違反に対し、自分の職歴に照らすと厳しい見方をすることが多いです。しかし、今回は少し厳し過ぎます。あるいは処分が間違っていた、という評価ができると思います」
理由の一つとして、2022年4月から18歳以上が「成人」の扱いになったことを挙げる。
少子高齢化社会のなかで社会保険の負担などを課すことを前提に、「社会的責任」を18・19歳にも持たせた。民法上でそう定められ、なおかつ選挙権も与えられたわけだ。
ちなみに18歳でも飲酒・喫煙を認めるべきだという案が自民党の特別委員会で議決されていた。しかし医師会からの反対に合い、政府は18歳からの飲酒・喫煙を認めなかったという背景があったそうだ(若狭弁護士は当時衆院議員。若者の健康意識を踏まえれば、2年早まれば脳の成長、肺がんの危険が増す、というのは昔ながらの硬直的な考えではないかと思ったそうだ)。
宮田は法律のもとでは、20歳未満のため、飲酒・煙草は法律違反に該当する。とはいえ、この法律には本人に対する罰金、処分規定がなく、「犯罪には一切問われない」。
しかも現在は、社会的には成人の立場になるのだ。
「犯罪にも問われないのに代表辞退は少し行き過ぎではないかと思います。検察官や公務員、例えば運転中の速度違反で罰金の処分を科されても、それで職を失うことはありません。制限速度を10キロぐらい超える人は多いと思いますが、それによって何らかの職業的な制約が加わることはまずありません」
若狭弁護士は「法律違反を軽微なものを含めて取り締まれば、全て職を失うことになってしまいます」と説明した。
一方、ルールはルールである、という意見について。若狭弁護士は、内部規律で処分するならば、まず反省を促すなど段階を踏むべきだったと指摘した。
「規約違反ではあります。しかし処分は本来段階を踏んで行っていくべきもの。指導を繰り返したり、反省を促したり、それはそれなりに効果があるのではないでしょうか。やったことと処分、バランスを保ちながら考えるべきでしょう」
「やったことと比例した処分なのかというと、かなり(オリンピック出場辞退)重い処分になりました。日本体操協会の行動規範に違反しても、それだけで法律的な犯罪にはなりません。一瞬にして出場辞退にするというのはバランスを失している。重きに過ぎると、私は思ってやまないところです」
どこで線引きをするのか。そう考えると、あまりに重すぎる処分ではないか、と言う見方だ。
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弱い立場にあった宮田が帰国直後、役員と話し合ったその場で「辞退」を持ちかけられ、そうせざるをえなかった……。弁護士を立てて法律的な判断を問いたい、代理人を介するのも一案だった。パリ五輪は開幕を迎えた。もう覆ることはないのだろうか。