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【横浜F・マリノス】デュエル重視の3バック、イングランド出身の指揮官らしいホーランドスタイル。「バスケットボールのようになっては…」切り替えに課題を挙げる

横浜FMがヤン・マテウスのゴールで上海海港に勝利! (C)2025 Asian Football Confederation (AFC)

相手によって対策を立てて挑む戦い方に。朴一圭が語った”伸びしろ”。

[ACLエリート LS7節] 横浜FM 1–0 上海申花/2025年2月12日19:00/横浜国際スタジアム

 AFCアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)リーグステージ(LS)7節、横浜F・マリノス(J1リーグ)がアンデルソン・ロペスのアシストからヤン・マテウスのゴールで上海申花(中国1部)に1-0の勝利を収めた。横浜FMはLS首位に立ち、1試合を残して、上位4位以内でのラウンド16進出を決めた。J1リーグ勢は、ヴィッセル神戸、川崎フロンターレも4位以内を確定させ、Jリーグ同士の東地区内でのノックアウトステージ1回戦の対戦は回避できた。

 イングランド代表やチェルシーFCのコーチなどを務めてきたイングランド出身のスティーブ・ホーランド監督は公式戦初陣で、無失点勝利を収めた。昨季からのチームの課題として、失点減が大きなテーマでもあり「クリーンシートに抑えられたのは素晴らしいこと」と、主催者のAFC選定のマンオブザマッチに選ばれたGK朴一圭も頷いた。

 システムは3-4-2-1を採用。どちらかというと右から偏った攻撃が展開されたが、相手チームの対策(スカウティング)によって、戦い方を変えていくこともチーム内で共有されているということだ。この日は左WBの永戸勝也がやや下がり目で、右シャドーのヤン・マテウスが攻守いずれも2トップ気味に前へ出る機会が見られた。

 ボランチはジャン・クルードがアンカー気味にCBの前にいることを心掛けていた。そして喜田拓也は積極的にボール奪取に動き、衛生役的にクルードをはじめ、中盤の選手をフォローしていた。

 3バックもほぼマンマークで対応。基本的にはイングランド出身の指揮官らしく、デュエル(決闘)=マッチアップを重視し、3バックから5バックまで状況に応じて対応し、前線では個の能力を最大限に生かすという戦い方だ。

 局面ごとに”ファイト”が重視され、プレミアリーグ出身の指導者のメンタリティが伝わり観ていても面白かった。前半はバタバタしたものの、この日の前線に外国籍選手を多く要する上海海港に、そういったデュエルで次第に上回りながら勝てたのもプラス材料だろう。

 ただし、3-4-2-1システムであれば本来生かしたい、相手のギャップを突いていく、という攻撃はあまり見られなかった。3バックには攻撃参加をそこまで求めておらず、前・北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督がJリーグで仕込んでいった、技術も備えたどちらかのストッパーが前へ繰り出し、そこからどんどんギャップを作り出してゴールに迫る――という組織的な戦い方とは明らかに異なる。

 F・マリノスとしては完全に新しいスタイルとも言える。ただ試合ごとに対策は立てるものの、逆に基本的にはデュエル重視のよりシンプルな戦い方とも言える。

 朴は「内容のところをブラッシュアップしていきたいです」とも語っていた。

「チームとしてどのようにボールを動かしていくか。そこは相手を分析してから落とし込んでいます。チームとして、どのように動かしていくかが大事で、今日はあのような形でやっていこうという狙いを持っていました。違った相手であれば、また違った形になっていくことになります」

 ホーランド監督はトランジション(切り替え)のところで、「バスケットボールのように攻守の切り替えが目まぐるしくなるのは、決して良いとは言えない。縦にパスをつけようと急ぎ過ぎたところもあり、状況によって、落ち着かせることも求めたい」と課題を挙げていた。

 守備にもより目が向けられ、プレミアリーグの上位陣が見せている強度とスピードを生かした本流の戦い方ともまた異なる。ただ、横浜FMの選手たちがホーランド監督の戦い方を先入観なく理解して取り組み、その先の栄光を信じて一丸となれるか。疑問があればぶつけて、そのうえでピッチに立てるか。

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 加えて、サポーターの声援や熱量がより選手たちに影響を与える戦い方とも感じた。日産スタジアムがパッションの熱に包まれるかどうかも、ホーランドマリノス躍進の鍵となりそうだ。

Posted by 塚越始