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横浜F・マリノス最下位低迷。アンデルソン・ロペス発言、そこは問題の根幹ではない。浦和戦の取材現場にいたが…

横浜FMのアンデルソン・ロペス。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

とても静かな口調で、すぐ全ては変わらない、(状況を)変えられなかった……というニュアンスのはずだった。

[J1 16節] C大阪 – 横浜FM/2025年5月11日15:00/ヨドコウ桜スタジアム

 J1リーグ16節、リーグ最下位に低迷する横浜F・マリノスが5月11日、AFCアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)エリート準々決勝を経ての最初のゲーム、アウェーでのセレッソ大阪戦に臨む。

 リーグ再開を前に、西野努スポーティングディレクター(SD)が5月9日に取材に応じた全文がクラブ公式サイトで公開された。監督交代劇を挟んだあとACLエリートへ向かう直前、4月20日の浦和レッズ戦後のアンデルソン・ロペスの発言を受けて、西野SDが直接、厳しく伝えたことなども報告されている。

「私としては(ロペスのコメントに)誤解を招く表現があったと伝えましたし、またかなり厳しく伝えました。正直、いろいろなことを考えましたが、行き過ぎた判断やアクションは今のチームにとって良くないので、何とか今いるメンバーがもっとパフォーマンスをしてもらうことを重視して、判断しました」

 クラブ内部が混乱している、一枚岩になれていない状況が伝わるようなニュアンスである。結果、サウジアラビアでのACLエリートのファイナルステージは準々決勝アル・ナスル戦で1-4の大敗を喫して帰国することになった。

 その浦和戦でアンデルソン・ロペスが取材に応じていた際、記者も話を聞いていた。それは決してチームを批判していたわけではなかった。

 浦和戦ということもあり、非常に多くの記者に囲まれていた。エースストライカーとしての責任も感じていたのだろう。途中出場で無得点に終わったロペスは自分自身に落胆して取材に応じ、「何も変わっていない」と話したところがあった。

 とても静かな口調で語っていた。が、確かにこの言葉だけが取り上げられて問題になりかねないとは感じた。本人としては、すぐ全ては変わらない、(自分の力で状況を)変えられなかった、(自身のベンチスタートという立ち位置が)まだ変わらなかった……という、ここから変えてみせたいという落胆しつつも少し前向きなニュアンスを含まれていたはずだった。

 実際、ロペスはクラブ批判だという記事が出ると、自身のSNSでそういった意図はなかったと説明していた。

 もちろん、ロペスのロッカールームなどを含めた振る舞い、西野SDとロペスの話し合いがどのようなものだったのかは分からない。とはいえクラブの状況を考えると、ここはアンデルソン・ロペスの意図をまず尊重して汲むべきだったとも感じる。

 むしろ、逆にクラブが一つになり切れていない。そんな状況が露呈されることになってしまっている。 

 1年前の決勝を含めACL敗退のダメージが、どれだけ選手、サポーター、クラブ全体に計り知れず大きいか。それはACLノックアウトステージ(優勝が目標になった段階での敗戦)を経験した者しか知らない領域(聖域とも言える)であり、そのあたりは浦和でも強化担当を担った西野氏こそ(2019年の浦和のACL決勝敗退時は正式にスタッフに就任する直前だったが)、よく理解しているはずだ。

 改めて、それぞれの想いを一つにするキッカケにしたい。

 もちろん今季J1リーグ9試合・1得点と、2年連続得点王であるアンデルソン・ロペス自身、そのパフォーマンスのキレを欠いているのも事実だ。それがメンタルによって持ち直せるのかどうか。エースの復調なしに、現状では低迷から脱せない。あるいはクラブとして何か決断を下すのであれば、日本人選手の台頭に賭けるか、夏のマーケットで前線を入れ替える博打を打つしかない。

 元オーストラリア代表のパトリック・キスノーボ監督のもと、再出発を切ることになった。このC大阪戦から、柏レイソル、京都サンガF.C.、ヴィッセル神戸、鹿島アントラーズ、FC町田ゼルビアと、強豪との怒涛の連戦が待っている。横浜FMにとって、まさに運命の船出となる。

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Posted by 塚越始