スペイン大好き原博実Jリーグ副理事長がイニエスタを語る「最後の最後まで信じていなかったよ」
Jリーグの原博実副理事長 写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
16歳の頃のプレーを目撃。「チキから『グアルディオラより上手くなるかもしれない』と言われて…」
――Jリーグ副理事長を務める原さんはスペインのサッカーに精通し、現地での人脈も広いです。ついにイニエスタ選手のFCバルセロナからヴィッセル神戸への加入が、正式に決まりました。
「最後の最後まで信じていなかったよ」
――ハハハ、確かにそうですね。
「中国リーグはないかなと思ったけれど、ペップ(グアルディオラ)がコーチ兼選手で呼びたいという話が出て、結局、最後はマンチェスター・シティに行ってしまうのかなと思ったりしたよ。ただ、イニエスタはバルセロナを敵に回して対戦することだけはしたくないと話していたから、ひょっとしたら……と期待はした。でも本当に来てくれるとは思いませんでしたね」
――若き頃のイニエスタのプレーを、原さんは見たことがあったそうですね?
「彼がバルセロナBでプレーしていた16歳のときに見ています。チキ(ベギリスタイン、元浦和レッズ)が『この選手はグアルディオラより上手くなるんじゃないかと注目しているんだ』と、当時からとても高い評価を受けていました。実際、当時3部リーグの大人相手に、試合中、一回もボールを失わなかったからね。一瞬の隙を逃さずボールを奪って、少しでもプレッシャーが甘ければかわして、正確にパスを入れて。こんなに上手い選手がいるのかって私も驚かされました。その選手がずっとバルサのトップチームを牽引してきて(2017-18シーズンまで16年間在籍)、そこから日本へ本当に来てくれるのかって、いまだに信じられないよ」
――34歳とはいえ、バルセロナのキャプテンを務め、スペイン代表の司令塔を担う、トップ・オブ・トップのJリーグ加入。あらゆるカテゴリーのプレーヤーが歓迎しています。
「日本人と変わらない体格をしていて、テクニックはもちろん、姿勢の美しさ、視野の広さ、ボールタッチ、判断力……彼から学べることはとても多いと思います。あらゆる選手にとってお手本になるでしょう。それにスーパースターなのに、もちろんとても闘うし、それでいて偉そうにせず、シャイで、みんなから信頼され、愛されている。そのキャラクターもまた魅力的ですね。Jリーグに興味を持ってもらったり、さらに多くの方にスタジアムに来てもらったりするチャンスでもあります。そのクラスの選手がJリーグを選んでくれたなんて、嬉しいですよ」
――今度はイニエスタ選手を通じて、Jリーグが世界に発信されていきますね。
「(フェルナンド)トーレスも来るのではないかと話題になっていますが(アトレチコ・マドリーからサガン鳥栖への移籍が噂されている)、これをキッカケに、ちょっと楽しみですね。Jリーグもこれまで25年、いろんな仕掛けをしてきました。そして次の25年をどうするのか。ここから世界の5大リーグにあらゆる面で目指していくのであれば、まずやはりチーム間、選手間の競争をもっと上げないといけないと感じています。その点について、イニエスタの加入による効果に期待しています。例えば外国籍選手枠について(現在は4枠[3枠+アジア枠])、枠を設けることで日本人選手は本当に伸びているのか。あるいは槙野が『国内でプレーするだけでは、海外でプレーする選手には勝てない』と言っていたと報じられていましたが、Jリーグでプレーする選手は伸び悩んでもいるのか。そこはタブーなく語り合い、精査すべきでしょう」
――Jリーグの外国籍選手枠の撤廃も?
「日本人とか外国籍選手とか関係なく戦っていいとも思いますし、一方で、育成面では21歳までの若手選手が出場機会を得られずにいる課題もあります。そのあたりのバランスがポイント。『規制緩和』『競争』『育成』、そこがJリーグのこれからの鍵を握っていると思っています」
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI
(※後日、Jリーグ原博実副理事へのインタビュー『Jの野心(仮)』を掲載いたします。Jクラブの拡大、クラブライセンス問題など…具体的な指針を示してくれています。お楽しみに!!)