【柏】ペルーから5年ぶり復帰。澤昌克が万雷の拍手に目を潤ませる「みんなのにこやかな表情を見て、本当に嬉しかった」
5年ぶりに澤が復帰。柏の新ユニフォーム姿で登場した。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
背番号は…「決して小泉選手とケンカしたわけではありません」。
新加入選手の小泉慶が8番、江坂任が10番を付けると発表されると、倍率2倍の抽選に当選して柏市民文化会館に駆けつけた1200人のレイソルサポーターから大きなどよめきと割れんばかりの歓声が起きた。
ただ、もっとも温かな拍手に迎えられたのが5年ぶりにペルーのデポルティボ・ムニシパルから柏レイソルに復帰した澤昌克だった。背番号は30。
「背番号は決して小泉選手とケンカしたわけではありませんからね(笑)(澤が在籍した08~13年までつけていたのが8番だった)。30はデポルティボでつけていたから愛着があります。〝サ(三)・ワ(輪=0)″で覚えていただければ嬉しいです」
万雷の拍手のなかステージに上がった澤は、黄色に染まった観客席の光景を見て、目を潤ませた。
「退団した5年前、お別れセレモニーまでしてもらったのに……。サプライズで退団して、サプライズで戻ってきて。これがサッカーの世界でもある。レイソルからオファーをもらったときは信じられず、驚きました。人と人とのつながりがあって、こうして舞台に立って、みんながにこやかな表情を浮かべているのを見て、本当に嬉しく思えました」
1983年1月12日生まれ、今日34歳の誕生日を迎える。学年的にはチーム最年長の栗澤遼一と同じ(栗澤は82年生まれ)。ペルーでのプレー経験が通算8年で、柏時代の6年よりも長いという異例のキャリアの持ち主だ。
「ペルーにいても、レイソルやJリーグのチームと世界の舞台で戦うことをずっと目標にしていて、クラブワールドカップに進めるコパ・リベルタドーレス(17シーズンに1試合出場)、スルガ銀行チャンピオンシップに臨めるコパ・スダメリカーナ(16シーズンに2試合出場)にも出場しました。ただ、簡単ではなかった。力の差を痛感させられました。だからこそ、レイソルの一員として、今度はACL(アジアチャンピオンズリーグ)で勝ちたい」
南米での悔しさをアジアにぶつける。そういう視点を持てる日本人選手は、澤しかいないない。
もちろん、ただ感動の話を提供するために、柏に帰還したつもりなど毛頭ない。
「感謝の気持ちは、ピッチの上でのプレーで表現して、チームの勝利のために貢献したいです」
そして澤はこんなことを語っていた。
「若い選手はとても巧い。でも、彼らにはないものを僕も持っている。そこを見せていきたいです」
2010年にJ2から這い上がり、11年から3年連続でJリーグのタイトルを獲得した。どん底から迎えた黄金期、そこに澤はいた。
加えて14年から渡ったペルーでの4年間、彼は新たな力を蓄えてきた。
前言を撤回しよう。やはり彼は観る者を熱くさせる魅力を備えている。心を動かせる貴重な選手だ。若さ溢れる柏に、タフさや反骨心をもたらすはずだ。「僕を踏み台にしてくれて構わない。ただ、僕もまだ老いぼれていない。いい味を出していきたい」と誓った澤が、再び柏のユニフォームを着る。思いはひとつだ。柏レイソルを、もっと強くしたい――そのためだけに。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI