中村憲剛が15年間走り続けて辿り着いた「日本一の光景」
優勝が決まったと知ると、中村はピッチで号泣した。(C)SAKANOWA
テスト生を経てJ2からのスタート。ついに超満員の等々力で、悲願を結実させる。
「この光景を待っていた」
Jリーグ史に残る名言の一つになるだろう。川崎フロンターレが最終節で成し遂げた大逆転リーグ優勝。川崎にとって、悲願の初タイトル獲得となった。そして試合後の中村憲剛のインタビューは心に残る、とても印象的なものだった。
スタンドからの「憲剛チャント」が歌い終わるまで、中村は耳をすました。最高の歌声が響くその時間を堪能するように。
試合終了の瞬間、ベンチから選手が走り込んでくるのを見て、逆転優勝を果たしたと知った。
「もう涙を止めることができなかった」
2003年、中央大卒業後にテスト生からJ2時代の川崎に加入。ほぼ無名の存在から日本代表にまで登りつめた。しかし川崎の象徴と言える男が最も望んでいたのが、チームにタイトルをもたらすことだった。
「長すぎて、長すぎて、このままタイトル取れずに辞めていくのかなと思っていた。でもずっとサポーターが後押しをしてくれて、本当にみんなで掴んだ優勝だった」
ついに日本一――Jリーグの頂点に立った。しかもフロンターレブルーに包まれた超満員の等々力競技場で。最高のシチュエーションだった。
「鬼さん先頭に『タイトルを獲る』と目標にしてやってきて、苦しい時もあった。ACLにもルヴァンカップに負けて、でも下を向かず最後まで諦めず走った結果、今日タイトルを獲れた」
中村が何より喜んだのが、その悲願をホームで迎えられたこと。しかも、スタンドを埋め尽くした超満員のサポーターの前で。
「僕が加入した時は3、4000人が当たり前だったスタジアムが、満員になるなんて夢にも思わなかった。そこで優勝して笑顔を分かち合えるなんて……本当に皆さんのお陰です。有難うございます」
2017年12月2日、中村の目の前に広がっていたのは、間違いなく日本一の光景だった。
文:サカノワ編集グループ