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【2021年のニューヒロイン】愛媛Lのドリブラー山口千尋がなでしこJ高倉麻子監督から受けたアドバイス「常に3つの――」

愛媛レディースの山口千尋。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

華麗にピッチを駆ける! 皇后杯は悔しい敗戦。

 2020シーズン最後のタイトルとなる皇后杯は、なでしこリーグ1部のチームの面々が準々決勝に駒を進めた。ただ3回戦ともなれば、簡単な試合などない。わずかに力及ばず散っていったチームのなかで、愛媛FCレディースの山口千尋は確かな手応えを掴んでいた。

 愛媛は昨年に続きノジマステラ神奈川相模原に、1-2で敗れた。

 今季、愛媛は1部初挑戦だったが最下位に終わった。だからこそ、皇后杯に懸ける想いは強かった。

「本気で優勝を狙っていこうって話してました。それを考えたら悔しくて最後ウルっと来てしまいました」

 そう語る山口は、敵将の北野誠監督に「別格」と評されたスピードが武器の左サイドハーフだ。立ち上がりからそのスピードを生かして鋭く前線へ切り込みシュートを放つなど、チャンスを作った。そして1点ビハインドで迎えた19分、右サイドから大矢歩が相手DFを振り切って駆け上がって蹴り出したクロスを、ファーサイドで頭で合わせた。完璧な流れでの同点ゴールに愛媛の選手たちの感情が一気に沸いた。

 どれだけ勝利から見放されてもリーグ戦ではパスサッカーを貫いた。短いパス1本にも意味を込める。そのワンタッチパスで鮮やかに相手のマークを剥がす場面を幾度となく作った。

 しかし62分、南野亜里沙にゴールを決められ、またしてもノジマステラの壁を越えられなかった。

 それでも、山口は悔しさと同等の充足感を噛み締めていた。

「1部ではドリブルに対して、相手のスピードも上がってきて対応される場面も多かったんですけど、今日はやれていたかなと思います」

 リーグ戦で感じてきた彼女の最大の課題でもあった。彼女のスピードは徹底的にケアされた。そこをどう突破していくか、今後の彼女の成長のためのポイントでもある。

 12月に入って、山口はなでしこジャパン(日本女子代表)の予備軍でもある「なでしこチャレンジ」に初めて招集され、これまでにない刺激を受けた。代表入りを狙う選手が揃うなか、スキルが高いのは最低限のレベルであり、そこからのプラスアルファが必要不可欠な世界だ。

「ドリブルやスピードが評価されて呼んでもらったと思うんですけど、全体的なレベルをもっと上げていかないと上ではやれない。特に“ボールを受ける前に相手を見る”判断の面ではまだまだ足りてないと感じました」

 なでしこジャパンの高倉麻子監督は、なでしこチャレンジに招集したメンバーも日本女子代表のラージグループと捉え、戦術理解とプレー精度を求める。そこでは素早い判断ー頭脳が求められる。

「選択肢を常に3つ持つことを言われたんですけど、自分はドリブルって決めたらそれしかない。でも、高倉監督に『常にパスとドリブルという選択肢を持てれば、もっと怖い選手になれる』と言われ、来年はこの部分を大事にしながら取り組んでいきたいと思います」

 皇后杯最後となった試合、山口は自らの強みを再確認できた。この一戦で地道に向き合ってきたパス&コントロールの成果を全員で発揮した愛媛というチームに秘められたポテンシャルの高さは疑いようがない。愛媛は来秋に開幕する日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)には参入しないが、楽しみなタレントを輩出し続けそうだ。

皇后杯は惜しくも3回戦で敗退に。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

PROFILE:山口千尋 YAMAGUCHI CHIHIRO /MF/1996年6月10日生まれ、長崎県出身。15848kg。A型 姫路獨協大学―愛媛FCレディース

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[取材・文・写真:早草紀子]

Posted by 早草紀子

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