【日本女子代表】塩越柚歩が流した歓喜だけではない涙の理由。『10番』そしてキャプテンとしてアジア大会優勝を果たす
アジア大会を制して金メダルを掴んだ日本女子代表の塩越柚歩。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
「最初は不安でした。でも大会が始まると、どこまで自分たちの力が通用するかが楽しみになっていきました」
サッカー日本女子代表がアジア大会で連覇を達成した。日本は同時期に「女子フル代表」であるなでしこジャパンが国際親善試合を行うこともあり、底上げに主眼が置かれた人選となった。
そして北朝鮮との決勝戦(〇4-1)、先発しながらもハーフタイムでベンチに退いたキャプテンの塩越柚歩(三菱重工浦和レッズレディース)は、試合後、涙を浮かべていた。
この大会のためだけに作られた急造チームだった。そのキャプテンを任され、優勝という結果を残した。最後の円陣で締めの言葉を促されると、塩越は「ありがとう、このチームで優勝できて良かった」と言葉を詰まらせた。
また、試合後の取材対応の際、再び目頭を熱くさせた塩越は、決して歓喜だけではない、その涙に込めた複雑な想いを吐露した。
「(大会の)途中から……自分自身、何もできなかったと思っています……」
キャプテンマークに加え、日本代表の「10番」を背負った。
「(責任や重みについて)あまり考えないようにしていました。若い選手が多いので、年上の自分がメンタル的な部分ではできることを考えてフォローしようと意識していました」
そして、日本の10番はやっと笑顔を浮かべた。
「(10代の選手も数多く選手されての優勝に)みんな人懐っこくてカワイイんです」
「正直、最初は不安でした。短時間でチームを仕上げなければいけませんでした。でも大会が始まると、試合をする度に『すごくいいチームだ』って感じて、どこまで自分たちの力が通用するか楽しみになっていきました。決勝は難しい展開になると覚悟していましたが、ゴールを決め切ってくれるみんなは、本当にスゴイですね!」
塩越自身のゴールは3ゴールにとどまったが、試合の推移をよく見て、チームを攻勢に振り切って試合を決めたり、時には猛攻に体を張って守備のリズムを作ったり、その献身が光った。塩越がメンバー入りした理由も分かるような、彼女がいたからこそできた「優勝」と言えた。
このタイトルは“自分たちはできるんだ”という大きな自信になったはずだ。それぞれが厳しい戦いのなか、どんどんタフさと逞しさを身につけながら辿り着いた頂点だった。