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初のWEリーグ制覇へあと5試合。村松智子が語るベレーザの真骨頂「こういう時こそ――」

ベレーザの村松智子が、痛恨のドローで呆然となる…。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

「今は自分たち次第で手の届くところにあります」

 最後のプレーだった。三菱重工浦和レッズレディースの島田芽衣の放ったゴールがネットを揺らした。

 日テレ・東京ヴェルディベレーザは、あとワンプレーを守り切れなかった。

 平日デイゲームに駆けつけたサポーターへ挨拶したあと、村松智子は悔し涙を流した。

「もう何回繰り返せば学ぶんだっていうくらい、こういう展開を繰り返しています……。せっかく前線の選手が点を獲ってくれたのに」

 絞り出す声に悔しさがにじむ。浦和が前線に配置する髙橋はなをターゲットにしてくることは分かっていた。フィジカルに長けた髙橋の威力に負けじと、村松は彼女を自由にプレーさせなかった。

 気迫は一つひとつのプレーと球際に表われていた。一人で止めようとせずピンチと判断すれば、適格にカバーリングにも徹底した。

 勝点3を欲して、後半に向けて村松はボランチと攻撃について話し合った。菅野奏音、眞城美春のどちらか一枚を下げて形を整えながら臨むのか、相手の前でボールを受けて展開するのか。その両方を使い分けて勝利を目指したが、勝利はできなかった。

「いい時間帯に先制ゴールが決まって、残りの時間は追加点を狙うのではなく、ディフェンダーを5枚にして守り抜くという意思はみんなに伝えたつもりでした。失点シーンはウィングバックを下げていれば防げた。あそこでもっと自分がリーダーシップを取らなければ……」

 ベレーザと言えば、2011年の女子ワールドカップ優勝メンバーを多く輩出し、現なでしこジャパンでも長谷川唯、山下杏也加(ともにマンチェスター・シティ)、田中美南(ユタ・ロイヤルズ)など出身者は多い。名門ではあるがWEリーグ発足から3シーズン優勝できずにいる。

 この引き分けで、ベレーザは消化試合が一つ少ないINAC神戸レオネッサと勝点39で並び、得失点差で上回り首位に立った。

 あと5試合。4シーズン目にして初めて頂点が見えてきた。

「昨シーズンはこの段階でタイトルから遠ざかっていました。今は自分たち次第で手が届くところにあります

 5月4日にはホームの味の素フィールド西が丘で、INAC神戸レオネッサとの直接対決を残している。

 キャプテンマークを巻く30歳になったCB村松は、ケガからも復活を遂げ、自らを奮い立たせながら戦っている。

「純粋にワクワクとはいきません(苦笑)、やっぱり緊張感があります。でも、楽しみたい! って気持ちはあります。みんなにも楽しもう! って言いたいし、こういう大事なところで力を発揮する大切さを、メニーナ(育成)時代から言われてきました。それを結果で示すのがベレーザの真骨頂だと感じています」

 村松は力強く語った。WEリーグ初制覇まで、ベレーザの負けられない戦いは続く。

Posted by 早草紀子