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【松本】松田直樹の『目標』を叶えるため。田中隼磨「4年前との違いを見せる」

小机駅からのスタジアムロードには1993年から昨季までの横浜FMの集合写真が並ぶ。2008年には田中隼磨(7番)と松田直樹(左上)が揃って写っている。(C)SAKANOWA

J1昇格の先、横浜FMに勝つ――。今回も叶えられず。

[J1 16節] 横浜FM 1-0 松本/2019年6月22日/日産スタジアム

 松本山雅FCのMF田中隼磨が6月22日のJ1リーグ16節、古巣の横浜F・マリノス戦で3-5-2の右ウイングバックとしてフル出場した。松本の背番号「3」はハードワークを怠らず隙のないプレーを見せたものの、チームは惜しくも0-1で敗れた。

「結果がすべて。チャンスはあったかもしれません。でも紙一重だったかもしれないけれど、その差を埋めるために、今日肌で感じ取ったことを整理して、チームに還元したいです」

 田中は悔しさを滲ませた。

 田中にとって、2001年にプロのキャリアをスタートさせたクラブ。リーグ連覇を果たした2004、05年を過ごし、一時代――黄金期を築いた。その後、名古屋グランパスを経て、2014年から松本でプレーする。

 その古巣と4年ぶりのJ1での再戦となった。

「個人的ないろんな感情は内に秘めておくべきで、自分の中ではいろんな思いが込み上げてきました。それだけに結果で応えたかった思いはありました」

 0-1で迎えた試合終盤にはフリーのシュートを外してしまい、「決めていれば勝点をもたらせたはずだっただけに」と唇を噛んだ。

 自身にとってはもちろん大切な試合である。同時に横浜から松本を選んだ故・松田直樹の思いを、田中は受け止めて戦ってきた。

『J1昇格よりもっと先へ。J1でマリノスに勝つことが目標』

 田中が感じ取ってきた、松田のその想いを叶えるため――。そのミッションを、今回、日産スタジアムで果たすことはできなかった(2015年は1分1敗)。

「(横浜FMに勝つことは)もちろん、それだけがすべてではないですが、こうしたクラブに勝てなければ、J1に生き残ることはできない。このレベルのクラブに、アウェーで勝つこと。それは僕は変わらない思いで追求していきます」

 田中は改めてそう強調した。

 ただし、その『目標』を叶えるためにも、まずJ1で生き残ること。そこにフォーカスを置く。

 言葉だけではなく、結果を残すこと。そうすることで、4年前とは違う――松本山雅をサポーターにも示さなければいけない、と。

「4年前はクラブにとっても、初めてのJ1でした。J1を経験している選手もスタッフもほとんどいなかった。あれから4年経ち、今回はJ1で生き残るための戦いをずっとしてきました。4年前に身に染みたあの悔しさを繰り返されないこと。その気持ちは変わらずに持っています」

 そのうえで田中は、「課題はたくさんあります。最終的にはまず生き残ること。そのためには結果がすべて。そこを突き止めてやっていきます」と改めて強調した。

 昨季最終節、松本は徳島ヴォルティスに引き分けてJ1昇格を決めた。その時、田中は「天国のマツさんは『お前ら情けないよ、勝てよ』と笑っていると思う」と語っていた。

 どうだろう、か。今頃、松田は、そろそろ山雅、マリノスからゴールぐらい決めろよ、と真顔で怒っているかもしれない。いずれにせよ、もう、笑ってはいない感じはする。

 互角以上に渡り合う日を、本気で目指す。そのためには、何がなんでも、今季、J1で生き残る。松田のつけていた背番号「3」を引き継いだ田中は誓う。クラブ全体としても、こうした敗戦での悔しさをエネルギーに変えて、熱量を増して推進力にしていきたい。

 試合後は松本サポーターからの熱い声援がゴール裏からも、ホームスタンドからも送られた。悔しさを募らせた田中は、改めてJ1に何としても生き残る、そのためにもホームで横浜F・マリノスに勝つ――と誓っていた。

 松本でのホームゲームは、11月23日の31節に組まれている。

松本の田中隼磨。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

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