徳島ヴォルティスのハンパない喪失感…島屋で6人目の”J1個人昇格”

徳島ヴォルティスからサガン鳥栖に移籍した島屋八徳。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

草刈り場というよりもJ最大の鉱山に。

 ついに島屋八徳までもが、サガン鳥栖へ移籍――。徳島ヴォルティスのサポーターが、半端ない喪失感に苛まれている。元エース、新エース、俊英サイドバック……昨オフから主力の相次ぐ流出が続き、今回ついにチーム最多得点のアタッカーまでも引き抜かれた。SNSでは「仕方ない。応援しよう」と背中を押す声が挙がる一方、「一緒にJ1しようという言葉はなんだったのか。いったい誰の言葉を信じればいいのか……」と人間不信に陥りそうな声も書き込まれている。

 とりわけ島屋に関しては、それぞれが複雑な想いを示している。宮崎県の大学に通いながらの県リーグ、働きながらの地域リーグ、そこからJ3のレノファ山口、そしてJ2の徳島、そして29歳にしてJ1の鳥栖入りを果たしたという努力の男である。

 SNSでは「サッカー選手も個人事業主。より良い条件と環境が提示されたのであれば、仕方がない」といった諦めの声が上がる一方、「嘘つきだ」などショックを受けている声も。

 昨オフから、実に6人目の個人の”J1昇格”である。錚々たる顔ぶれで、いずれもチームで貴重な戦力となっている。

・渡大生(北九州→徳島→広島)
・馬渡和彰(鳥取→金沢→徳島→広島)
・大崎玲央(横浜FC→徳島→神戸)
・山崎凌吾(鳥栖→徳島→湘南)
・大本祐槻(岐阜→徳島→長崎)
・島屋八徳(HOYO大分→山口→徳島→鳥栖)

 島屋、渡、馬渡、大本のように下のカテゴリーから”這い上がってきたタイプ”と、大崎や山崎のように”再生”を果たしたタイプに分けられる。いずれにせよ、リカルド・ロドリゲス監督のもと、特長を出し切って進化を遂げたことで、引き抜かれていった。

 すなわち、それぞれの選手が最も輝くプレーを見ていたのが徳島サポーターである。それだけに心境も複雑なようだ。

 クラブもそういった移籍に関しては基本的に背中を押すスタンスをとっている。とはいえ、これだけ主力がいなくなれば、クラブとしての目標(魅力)も失いかねない。移籍金を獲得しても、それは何に生かすための資金なのか? J1で戦うことを目指しているのであれば、現状は決していい流れとは言えない。

 何よりクラブのために、と愛着を示す選手こそ応援したくなるのもファンの心理であるだろう。チームの好不調の波が激しい今季、最近は4試合負けなしと勢いをつけ11勝5分11敗と10位に順位を上げ、昇格プレーオフを目指すうえで、正念場を迎えている。SNSでは「残留争いしているチームへの移籍が目立つ。徳島が来季J1に昇格して、彼らを再び呼べばいい!」という男気な発言も見られた。

 草刈り場というよりも、Jリーグ最大の宝石鉱山となっていると言っても過言ではない。しかも発掘から研磨までクラブが面倒を見ている感じだ。

 おそらく理想はシーズン最後まで、できるだけメンバーを変えず戦い、シーズンオフの移籍は容認せざるを得ないという状況にすることか(もちろん、そのスタンスであっても徳島は過去に何度も痛い目にあってきたが)。シーズン途中の契約解除金(違約金、移籍金)は高く設定するなど具体的な対策も必要かもしれない。または逆に、リカルド・ロドリゲス体制を盤石にして、再生・育成クラブ=「鉱山」としてのブランド力を高めるのも一案だ。

 昨オフとこの夏の移籍市場で、徳島は話題を集めた。Jリーグの中で再生・育成のカラーは打ち出せた。ただ一方で、徳島という地域で、どのような存在になることを目指しているのかが見えない。四国唯一J1を経験しているクラブであり、この一連の移籍の動きを踏まえ、そのあたりの徳島だからこそできる「ヴォルティスカラー」を打ち出していきたい。

文:サカノワ編集グループ

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