2戦連続コイントスで陣地変更。名波監督の意図は?浦和とFC東京の共通点として…
磐田の名波浩監督。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
ゲームキャプテンの大井に伝えた指示――。
[J1 11節] FC東京 1-0 磐田/2019年5月12日/味の素スタジアム
ジュビロ磐田は84分の久保建英のボレー弾による失点で、今季初の連勝を逃した。ここ5試合は1勝4敗で、2勝3分6敗で15位に再び下降。母親を亡くして帰国したFWロドリゲス不在のなか、チーム一丸での踏ん張りどころを迎えている。
この試合のコイントスのあと、磐田のゲームキャプテンを務めるセンターバックの大井健太郎は、普段であればメインスタンドから向かって(「DAZN」やTVの方向)、アウェーチームは右から左に攻めるところ、逆の陣地――左側を選択した。
実は前節5月3日の埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ戦でも、磐田は同じ選択をしていた。
コイントスで勝った大井は、同様に左の陣地を迷わず指定した。
つまり後半、ホームチームが、最も熱い応援を続けるサポーターの待つゴールに向かうのを”阻止”した形だ(もちろん磐田も、最もサポーターのいるゴールとは逆に攻めることになるが)。普段の「流れ」を変えてみせた。
その理由について、磐田の名波浩監督はFC東京との試合後の記者会見で明かした。
「(コイントスによる)チェンジサイド(陣地の入れ替え)は、前節のアウェーの浦和戦でもしていましたが、我々は勝てていなかったので。ちょっとその流れを変える意味で、変更するように伝えていました。コイントスで勝たないと選択はできません。今回もキャプテンが(コイントスに)勝ったことでそうしました」
前節の浦和戦を迎えるまで、磐田は3連敗を喫していた。内容的には徐々に改善も見られるなか、不運も重なった。逆に浦和は効果的にゴールを奪って3連勝を収めて勢いに乗っていた。加えて、磐田は埼スタで前年のリーグ戦、0-4の大敗を喫していた。その「勢い」を、磐田に向かわせたいという狙いだった。
そして今回、FC東京は開幕から無敗で首位をキープ。ラグビー・ワールドカップが開催される影響で前半戦にホームゲームが多く組まれ、実に味スタにて5連勝中である。今回も浦和戦に続き、その「勢い」を削ぐ意図があった。
結果は1勝1敗。効果は少なからずあったと言えた。今回も主導権を握り、相手を苦しめることができた(チャンスも限られたが……)。
これからのアウェーゲームでのそういった駆け引きはもちろん、磐田のホームであるヤマハスタジアムで相手がどのような選択をしてくるのか? そんなやりとりも注目の一つになるか。
とはいえ、ゲームキャプテンの大井は戦列復帰から2試合連続でのフル出場。単に運を引き寄せただけとはいえ、何よりアウェーゲームのコイントスで”2連勝”を収め、指揮官の指示を忠実に実現してしまうあたり、磐田の漢だと印象付けた。
文:サカノワ編集グループ