長谷部が日本の育成に言及。高校年代以降の「伸びは正直ドイツと差がある」
長谷部誠。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
「なぜだろうと、僕も疑問に思っている部分」。Jリーグ全体で考えたい課題。
アイントラハト・フランクフルトの長谷部誠が5月26日、浦和レッズ対サンフレッチェ広島戦の試合前に埼玉スタジアムで、ブンデスリーガとの共同企画として、浦和ユースと浦和ジュニアユースの選手たちへの講話会を行った。そのなかで長谷部が日本の育成について言及。「みんなの年代までは、ドイツのトップレベルとそこまで変わらない。勝つことも多い。しかし、ここからの伸びに、正直、日本とドイツでまだ差がある。浦和でレギュラーを張るぐらいの目標でやらないと」と、選手たちに発破をかけた。
長谷部は「これまでドイツやヨーロッパでいろいろなクラブを見てきたが、みんながプレーするユース年代の環境はとても素晴らしい点」と、浦和をはじめ下部組織のプレー環境が非常に充実していると強調した。そのうえで、次のように指摘もした。
「今いる環境に感謝し、ここからどれだけ変われるか。僕が見てきて感じるのは、中学や高校年代は、正直、みんなとドイツのトップの選手たちとそこまでレベルが変わらない。試合をやっても結構勝っている。しかし、ここからの伸びでは、ドイツと日本ではまだ差がある。そこは、自分でも、なぜだろうと疑問に思っている部分ではあります」
そのように日本とドイツの「高校世代」以降の育成の差に首を傾げた。
「ドイツでは17、18歳でトップチームに練習参加し、そのままブンデスリーガの試合に出ている選手は少なくない。これぐらいの年齢(高校生)になったら、浦和のトップチームでプレーし、レギュラーを張る。それぐらいの気持ちでやらないと。そこを目指してやってほしい」
長谷部は浦和ユースの選手たちに対し、”トップチーム”を意識して常にプレーすることを呼びかけた。
実力社会ではあるがJリーグ全体としてベテラン選手が比較的重宝される傾向が影響しているのか。ユースとトップチームの連携に問題があるのか。高校3年の早い段階で大学進学など進路を決めなければいけないからか。クラブのみならずJリーグとしての最近の大物獲得を促す動きも関係しているのか……。長谷部の指摘は、Jリーグ全体で考えるべきテーマの一つでもありそうだ。
また、「上の目指し方も千差万別」として、「(本田)圭佑のように強い意識を持つ選手がいてもいい。一方、一つひとつ目の前のことを乗り越えながら上を目指す方法もある。みんながみんな、同じような方法で目指す必要はない」とも語った。
そして「自分自身を知ること」の大切さを強調した。
「例えば僕は、まずプロになったあと、浦和でプレーすることが目標だった。そこから一つずつ目標を積み重ねた先に海外があった。最初は海外でプレーするなんて思ってもみなかった。もちろんビッグクラブでプレーしたい、という目標を持って取り組む選手がいてもいい。いずれにせよ、自分のパーソナリティ、人間性を知ることが大事。無理に格好いい選手のことを真似る必要はない」
そのように、長谷部はそれぞれにあった「目標」の立て方があり、それを探し出してほしいと呼びかけた。
関連記事:長谷部誠「遅刻」「寝坊」は一度もなし。「みんなへのリスペクトにもつながる」
[取材・文:塚越始]
text by Hajime TSUKAKOSHI