【松本】反町監督が苦笑「その質問かなり堪えるな」と明かした未遂のマリノス対策
松本の反町康治監督。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
『クリア』が失点につながる傾向。そこで――。
[J1 16節] 横浜FM 1-0 松本/2019年6月22日/日産スタジアム
松本山雅FCがJ1リーグ16節、横浜F・マリノスに0-1で敗れた。リーグ戦通算4勝4分8敗の勝点16で、ついにJ1・J2入れ替え戦圏内の16位に順位を落とした。
好調な横浜FMから何度か決定機を作り出した。今季リーグ初出場初スタメンの山本大貴が前線からのチェイスを怠らず、押し込めば先制、という惜しいシュートも放った。そして宮阪政樹のショットはクロスバーを直撃。0-1で迎えた試合終了間際には、田中隼磨がフリーのシュートを放ったが、枠を捉え切れなかった。
松本の反町康治監督は試合後の記者会見で、次のように最低でも勝点1を持ち帰りたかったと無念さを滲ませた。
「残念な結果ですが、この2試合、我々はストレスと言いますか、私たちらしさを出せない試合が続いていました。今日は勝点を取れませんでしたが、我々らしさは出せたゲームだったと思います。もちろん『何やっているんだ』と言われるかもしれませんが、現在地の持っている力は出し切れたのではないかと思います。そうした意味でも、勝点を本当に持ち帰りたかったというのが正直な感想です」
守備に軸足を置く。その戦いを追求していくことで、ゴール前の迫力がやや物足りなくなってしまう。松本が常に抱えてきたテーマである。今回は相手シュートもポストやバーを叩く運に恵まれたしっかり耐え続けていた。
が、ゴールからの逆算ができていない。あるいは、ゴールへの道筋を共有できていない。横浜FMがまさにそうした点を踏まえてプランを組んできていただけに、そんな課題を突き付けられる結果となった。
「天候もあまり良くないなか、アウェーでもたくさん最後まで応援していただき、最後は力強く鼓舞してくれて、我々のサポーターには本当に感謝しています。最後の声を無駄にしないためにも、這い上がっていきたいと思います」
指揮官は常に、アウェーでこれだけ多くのサポーターが来てくれることを「当たり前だと思うな」と選手たちに強調してきた。その想いを改めて伝える言葉だった。
また、この記者会見の最後、こんな質問が指揮官に飛んだ。
「ロングボールが多かったが、あれはアバウトに蹴り込んでいただけなのか。それとも何かしっかり狙いがあって突いていたのか?」
すると反町監督は「その質問、かなり堪えるな」と苦笑を浮かべつつ、次のように詳しく説明をした。そのなかで、今後の対戦相手にとっても参考になりそうな「マリノス対策」も明かされた。
「マリノスの失点の場面を見ると、『クリア』が得点につながっていることが多い。たとえば我々のクリア。それだけをやれと言っていたわけではないですが、難しいボールを背後へ蹴り、まず相手を裏返しておきたいという場面もありました。そこで一つスイッチを入れられる。(DFなどが)ルックアップした時に狙えるな、というときの選択肢には入れていました」
反町監督らしく横浜FMの失点パターンを分析したうえで、相手の背後へ蹴り込み、最終ラインと中盤の”分断”を狙っていた意図が明かされた。
「(横浜FMは)ほとんど2バックの形で守っているので、そのサイドのスペースを突きたい。ただ、(素早く突けなければ)テンションの高い相手の切り替えにあい、結局ボールを奪われてしまう。ただ、そこを生かせないとチャンスは作れないと感じていました。だからと言って、闇雲にコーナーフラッグを目指して蹴っていたわけではありませんでした」
松本としても、そうしたロングボールも交えながら、いわゆる5レーンのハーフスペース攻略を狙っていたという。
「マリノスさんはいわゆるハーフスペースを攻略して、今季これまで10点ぐらい決めています。しかし結果的に、そこに飛び出して行く典型的な形からやられてしまいました。
私たちもあのスペースを突いて、相手に横を向かせて勝負する、という狙いはありました。ただ、その回数がマリノスの10に対し、私たちは1か2ぐらい。
その溝をこれから埋めていくために、やっていくしかありません。
ですから、(ロングボールは)そうしたDFに横を向かせたい時、あるいは裏返してスイッチを入れたい時に狙っています。ただ、相手のプレッシャーも早く、ウチはちょっと判断も遅いので(苦笑)、クリアがアバウトに見えた。その指摘は否めないかなと思います」
そのように松本の狙いについて、指揮官は語った。決して全部が全部、適当(アバウト)に蹴っていたわけではない。ただ、そう思われても仕方なかった……と唇を噛んだ。
そして、反町監督は次のように日本サッカー協会と南米のパイプ役を担ってきたJFA国際委員の北山朝徳の訃報についても触れた。
「北山さんが亡くなられて、ブラジル(コパ・アメリカ)の日本代表の選手たちが喪章をつけてプレーしました。私も北山さんには色々お世話になりました。できればすぐにでも線香をあげに行きたいぐらいの気持ちです。南米へ行った時、本当によくしていただいたのでお礼を申し上げたいと思います。有難うございました」
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI