キャプテン扇原貴宏がカズと先頭で入場「一流選手は人としても一流だと感じました」
カズとともに先頭で入場する横浜F・マリノスの扇原貴宏。(C)SAKANOWA
スプリントから貴重なPK獲得、苦しみながらも最後は試合を引き締める。
[天皇杯3回戦] 横浜FM 2-1 横浜FC/2018年8月14日/ニッパツ三ッ沢球技場
横浜F・マリノスのMF扇原貴宏が天皇杯3回戦の横浜FC戦、キャプテンマークを巻いてフル出場を果たした。思い切ったスプリントから1-0で迎えた前半アディショナルタイムにPKを獲得。何より中盤の底でチームを引き締めながら、試合全体をオーガナイズする役割を担い、勝利とベスト16進出を成し遂げた。
2年連続ではあるが、今回の横浜ダービーは、扇原にとっても特別な舞台になったと言う。
「サポーター同士も一段と熱く、横浜ダービーは絶対に負けられないと、何よりそういう気持ちで試合に入りました。僕らもこのタイトルを狙っているので、いいモチベーションで臨めました」
ただし、チームのまとめ役としては、起承転結の「転」あたりから、横浜FCの”登場シーン”が増えてしまったことを反省点に挙げていた。
「途中まではパーフェクトな内容でした。ただ3点目、4点目を取れないとこうした展開になり得るとは想定していて、後半途中からのゲームコントロールの面で、相手にペースを握られました。そこでみんな急ぎすぎず、(敵陣にスペースがあるので)カウンターで行けてしまうのだれども、もう少し時間を作りながらボールを握って回すとか、上手くできたかなと思います」
チャンスだと思いカウンターを繰り出し、まさにボクシングで言うところのクロスカウンターを浴びる場面が続いた。そのあたりは、こうした一発勝負で勝利にこだわるためにも、意思統一が不可欠だと強調していた。
「そこはもったいなかったです。ただ前半から後半立ち上がりまで、とてもいいサッカーができたので、そこはポジティブに捉えています」
入場の際、この日のゲームキャプテンであった52歳の三浦知良と先頭で並んだ。
扇原が生まれた1991年、カズはすでにプロ6年目の24歳だった。ブラジルから帰国して2年目、Jリーグスタートを控えた読売クラブ(現・東京ヴェルディ)で少しずつ地歩を固め、日本代表でもエースの座を掴もうとしていた時だ。
ある意味、カズは父親であってもおかしくない年齢だ。そんなレジェンドとの時間は、「光栄なことでした。こうした機会はめったにありませんから、とても貴重な体験をできました。その時間を噛み締めながら、試合に臨むことができました」と振り返っていた。
ロビーで整列した際にも、いろいろな話もしたという。
「まずカズさんからマリノスの選手たちに挨拶に来て握手してくれたり、そういったふとした振る舞いも一流だと感じました。そういった面で、一流の選手は、人としても一流であると改めて思いましたし、得るものは多かったです」
扇原はそのように、率直に喜んでいた。
週末のJ1・23節のセレッソ大阪戦が出場停止になることも、少なからず関係していたはずだ。キャプテンマークを託された扇原もまたカズ以上に、三ツ沢のピッチでひときわ存在感を放ち、「ハードワークが重要。それがPK獲得にもつながりました」。守備面でも破綻することなくアグレッシブに最後まで戦い続けた。
クラブにとって、タイトル獲得は今季の最大の使命だ。リーグ戦はしっかり上位に食らいつき、天皇杯であれば「あと4勝」。それを果たすためには、トリコロールの6番が、この日、何度も浮かべた笑顔を、もっとたくさん見せることが”条件”になる。
関連記事:デ・ブライネ、スターリング…横浜の畠中槙之輔が語った「間合い」の怖さと重要性
[取材・文:塚越始]
text by Hajime TSUKAKOSHI