「NACKスタ男」佐相が明かす再出発のとき――昌平高の選手権、最後のロッカールーム
昌平高から大宮に加入。新人・佐相の挑戦が始まる。(C)SAKANOWA
堪えきれず涙をこぼすエースに飛んだゲキ
昌平高校から大宮アルディージャに加入した新人の佐相壱明は、NACK5スタジアムで高校時代に公式戦通算4試合・6ゴールを決めている。「インターハイ予選決勝でハットトリック、選手権などの予選でも決勝点を決めていて、縁起も相性も良いです。本当にピッチに立つだけで自信になります」と佐相は振り返る、「NACKスタ男」と言っていい楽しみなストライカーだ。
「NACKスタ男」としての真価が問われたのが昨年の12月31日、このスタジアムで迎えた高校選手権1回戦の広島皆実戦だった。「大宮アルディージャのサポーターの方が激励の横断幕を出してくれて、『ここで結果を残さなければ次がないな』ぐらいの気持ちで臨みました。プレッシャーは……ありました(笑)」。
そしてそのプレッシャーを力に代えて前半19分、ドンピシャのタイミングでヘッドに合わせて先制点を奪取。試合も1-1で突入したPK戦を制して、2回戦に駒を進めた。「あの状況で点が取れて、ホッとしました」と、大宮サポーターへの挨拶代わりの一撃になった。
ただ続く1月2日、浦和駒場スタジアムでの2回戦・神村学園戦に0-1で敗れ、佐相の高校サッカー生活は終わりを告げてしまう。
その試合後の様子について、佐相は明かしてくれた。
これまで大きな舞台で敗れても泣くことのなかった佐相だが、「試合後に周回してスタンドにいる応援団の仲間がいるところに来て、耐えられなくなり、ロッカールームで藤島崇之監督の話を聞いたときに、もう泣いてしまいました」と振り返る。
佐相がプロ入りを決断する際にも、藤島監督からは、その覚悟を何度も確認された。試合でも佐相に対しては、常に高い要求が課されてきた。
ロッカールームで、藤島監督から卒業生たちに労いの言葉が投げかけられるなか、佐相には「プロは結果を残せなければ、すぐクビを切られる世界だからな。しっかりやれよ!」と、改めて気持ちを切り替えて戦うようにゲキが飛んだそうだ。
佐相はその言葉が心に残っているという。高校サッカー最後の瞬間、それは再出発を告げるときとなった。そしsて大宮の新体制発表会で彼は「ゴールを決めるしかない。結果を残して、生き残っていきたいです」と胸を張って決意を示していた。
NACK5スタジアムのピッチに立てば、何かが起きる――。18歳のストライカー佐相が背中に受ける声援を力に代えて飛躍を遂げる。記録にも、記憶にも残るゴールを、たくさん決めてもらいたい。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI