【サッカー日本代表】伊東純也 vs 告発女性、裁判の行方は? 北村弁護士が「異例」と語る理由とは?
伊東純也。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
ユーチューブ『弁護士北村晴男ちゃんねる』で詳しく解説、「刑事と民事では立証のハードルが違う」。
週刊誌に嘘の情報を語ったとして女性2人を虚偽告訴罪で刑事告訴し、損害賠償の民事訴訟も起こしているサッカー日本代表(SAMURAI BLUE)のMF伊東純也(スタッド・ランス)を巡る件で、弁護士の北村晴男氏がこのほどユーチューブチャンネル『弁護士北村晴男ちゃんねる』を更新。「【双方が不起訴】伊東純也選手VS告発女性 裁判はどうなる?」と題した動画を公開した。そのなかで北村弁護士は第1ラウンドは伊東が「完勝」を収めたとして、第2ラウンドの争点を整理し、今後を展望している。
伊東は北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終(3次)予選の9月シリーズに臨んだ日本代表に約7か月ぶりに復帰。中国代表戦で1得点・2アシストと活躍するなど、さっそく2試合に途中出場し、2026年のW杯に向けて、森保ジャパンの最終予選連勝スタートに大きく貢献した。
双方が訴えた刑事事件はいずれも嫌疑不十分で不起訴処分に。しかし、両者が検察審査会へ審査申し立てを行っている。
状況としては、まず当初の刑事事件では両者不起訴、そして伊東サイドが改めて刑事で週刊誌側を訴え、民事でも争いに――という構図だ。北村弁護士は「第一ラウンドは伊東選手の完勝と言っていい」として、次のように説明した。
「性犯罪で被害者(今回は女性A子・B子)の言い分がまったく聞き入れられなかったのは、私の経験ではなかなか少ない。被害者側の言っていることに合理性があると、捜査機関は被害者側の供述を軸に、犯罪事実を構成し、起訴まで持って行くケースが多いです。『女性側の供述が信用できない』と検察は判断した。異例だと思います」
週刊誌の記事の細かい点などが事実とは言えず、警察と検察は「女性の供述を信じて、(伊東の)罪を問うのは難しいと考えた」と、伊東側の主張が認められたのだろうと語った。
ただし伊東サイドが女性2人を訴えた虚偽告訴罪について、(服装など)仔細な事実との違いはあったとしても「それは犯罪事実そのものを差していない。人間には勘違いも入ってくるので、『故意に嘘を言った』というにはちょっと弱い」と、明確な「証拠」がないため、犯罪としては立件できなかったと見ている。
そして、第2ラウンド。伊東サイドの週刊新潮の編集者らを名誉棄損で訴えた刑事告訴が認められるかどうか。さらに民事では、それぞれが損害賠償を請求していて、「併合審理」の可能性もあるという。いずれにせよ、それぞれ「時間がかかる」ということだ。
民事に関しては早くても約10か月後、まず裁判所からの心証開示に基づく和解勧告が出されると見ている。そこで和解する可能性が高いのではないかと見ていた。
また北村弁護士は、伊東の日本代表復帰について、「そこまで持って行くには大変は苦労があり、伊東選手と弁護人の二人三脚で勝ち得た一旦の成果だと思います」と労をねぎらい評価していた。
しかし一方、刑事では不起訴でも、民事ではどちらか優位なほうの主張が認められるため、「民事で犯罪行為があったと認定されることは、一般論としては、いくらでもあります」という。
伊東の件とは別件だが、北村弁護士は動画の最後で、刑事事件では認められなかった殺人事件が民事では犯人として認定された案件を担当してきたと体験を明かす。
そして「それほど刑事と民事の立証のハードルは違います」と強調。「少なくとも生命保険に関する事件を多く扱ってきた弁護士からすると、社会で言われるほど殺人事件は少なくない。刑事として立件されない殺人事件は10倍、20倍あるのではないかと、実感として感じています」と締めくくっている。