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今日アメリカ戦。なでしこ復帰の籾木結花、人生のターニングポイントとなったスウェーデン時代【NADEHSIKO STORY 前編】

スウェーデン1部リンショーピングFC時代の籾木結花。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

5年前の『SheBelieves Cup』、米国の女子サッカー熱に衝撃を受けて――。

[SheBelieves Cup 第3戦] アメリカ – 日本/2025年2月27日12:30(現地26日)/スナップドラゴン・スタジアム(サンディエゴ)

 なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)の籾木結花(レスター・シティ)は5年前の『SheBelieves Cup』、大歓声がスタジアム中に響くアメリカの女子サッカー熱を目の当たりにして、「子供たちから大人まで、これだけの人が熱狂している……。この雰囲気、めちゃくちゃ好きです」と目を輝かせていた。

 その籾木がニルス・ニールセン新監督のもと、このアメリカでの大会で、復帰を果たした。

「ものすごく特別な8分間でした」

 第1戦のオーストラリア代表戦。ベンチスタートだった彼女がピッチサイドでスタンバイしたのは、15分を切ってからだった。ただ、なかなかプレーが途切れず、どんどん時間が経過していった。

「代表を離れていた3年半よりも、ピッチサイドでプレーが切れるのを待っていたほうが長く感じたかもしれません(苦笑)」

 籾木の復帰戦はアディショナルタイムを含めて8分間だった。その間に、シュートやクロスを放ち、彼女らしい見せ場を作り出していった。

今大会のオーストラリア戦で代表復帰を果たした籾木。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

 パリ・オリンピックを目指した池田太前体制、籾木はなかなか招集される機会を得られなかった。

 そんな状況が続くなか、2023年4月、筆者は気になっていた彼女のプレーしていたスウェーデンを訪れた。

スウェーデン1部リンショーピングFCでの籾木結花。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

 2021年にアメリカのOLレインに移籍した籾木だが、レンタルされていたスウェーデンのリンショーピングFCへの完全移籍を果たしていた。そこには自身よりもはるかに上背のあるチームメイトと英語に加えスウェーデン語を交えながらコミュニケーションをとりトレーニングに打ち込んでいる姿があった。

「コロナ禍にOLレインから声をかけてもらい、アメリカのサッカーは自分とスタイルが異なることは分かっていましたが、このチャンスを掴まないと一生世界には出て行けないと思いました」

 世代別の日本代表で活躍してきた籾木にとって、海外でのプレーは幼い頃から抱いてきた夢だった。そして日テレ・ベレーザからアメリカへの移籍を決断したのは24歳の時だった。

「16歳から(日テレ)ベレーザでプレーして約8年、このチームメイトとなら世界で戦えるサッカーができると思っていて、自分の力を存分に引き出してもらえて、自分もみんなの力を引き出せていたと思います。そういう関係性だったからこそ、自分の幅がベレーザでプレーする以上に広がらないのでは、という危機感を持つようにもなっていました」

 覚悟して臨んだ海外初挑戦、当初はクラブもつなぐスタイルを目指すために籾木を迎え入れた。次第に結果のみを求める方向性へと変化していき、彼女の持ち味が生かせなくなっていく。ただ、それを受け入れてプレーしていったが、アピールの方向も違ってしまったと振り返る。

「アメリカにいる選手とタイプが異なるからこそ、自分が活きると思い込んで、自分のやってきたことを曲げなかったんです。そうやって活きようとしたんですけれど、”上手いプレー”で自分の特長を出すのではなく、チームの一員として信頼を得ることが大事でした。これはスウェーデンに渡ったあと、アメリカの経験があったから気付けたことです」

 スウェーデンでは、アメリカとは真逆のアプローチでトライした。とにかくチームのために動く。彼女が監督やチームメイトから信頼を得ている。その試合での連動性を見れば一目瞭然だった。何よりそんな彼女は実に楽しそうにプレーしていた。

写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

 スウェーデンでの籾木は「夏のブレイク前までに15ゴールは決めたい。去年よりも突き抜けたい」と語っていた宣言通り、2023-24シーズン、リーグ戦15ゴール・7アシストの活躍で年間最優秀MFを受賞した。さらに年間MVPの候補にもノミネートされた。

「いろんなアプローチをしてくれる監督やチームメイトに恵まれたスウェーデンでの環境で自分が評価されているのは嬉しいですけど、だからこそ、そこにまた甘えてしまう感じがします。居心地が良くなったら、ここから抜けなきゃって思ってしまうんです(笑)」

 そして籾木は昨年、イングランド・スーパーリーグ、レスター・シティへの移籍を果たす。ストイックなまでに努力をし続けることに楽しみを見出していた彼女は、アメリカとスウェーデンでの経験を上手く融合させて、その能力を改めて開花させていった。

写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

※後編に続く
取材・写真/早草紀子
text and photos by Noriko HAYAKUSA

Posted by 早草紀子