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バイエルンの中心で輝く谷川萌々子「サポーターのお陰でパワーを貰っています」。なでしこエース候補が語るドイツでの日々【現地発コラム│FC BayernとMunichに恋して】

女子CLでアーセナルに逆転勝利! 笑顔を浮かべるバイエルンの谷川萌々子。(C)Midori IKENOUCHI

女子CLでアーセナルに逆転勝利に導く。あの代表の大先輩からも助言をもらう。

 バイエルン・ミュンヘンの女子チームがUEFA女子チャンピオンズリーグ(女子CL)でアーセナルと激突した11月12日、アリアンツ・アレーナには独特の緊張感が漂っていた。日頃ドイツ王者であるトップチームの撮影でこのスタジアムに通う筆者のファインダーに飛び込んできたのは、金髪の選手が多い中でひときわ目を引く、黒髪で引き締まった表情の――谷川萌々子だった。

 キックオフからわずか5分、バイエルンはアーセナルに先制を許し、その後も主導権を奪えず0-2で前半を終える。だが、後半に入るとゲームの空気は一変する。パスが連続してつながり、バイエルンが一気に攻勢へ。その流れの中心に、常に谷川の姿があった。

 谷川はゴールをアシストし、自身も渾身の一蹴でゴールに迫った。得点こそならなかったものの、アリアンツ・アレーナの空気を変えるほどの存在感を見せつけた。

 バイエルンは怒涛の3ゴールで逆転勝利を収め、スタジアムは歓喜と興奮の大歓声に包まれた。

バイエルンがアーセナルに逆転! (C)Midori IKENOUCHI

 試合後、谷川はミュンヘンでの生活についても語ってくれた。

「試合のある日を除いて、基本的に朝起きて練習場へ行き、自宅へ戻るというルーティーンで、充実した日々を送っています」

 2021–23年に同クラブに所属していた熊谷紗季から、生活面のアドバイスを受けていたことも大きな支えとなっているという。自炊を中心に体調管理を徹底しつつ、オフにはミュンヘンの街へ出て気分転換もする。

 女子チームの選手にはバイエルンをサポートするアウディから乗用車が貸与されるが、彼女が選んだのはコンパクトなA3。「ミュンヘンは縦列駐車が多いので」と笑った。

 アリアンツ・アレーナでプレーする機会は今季2度目だった。さまざまなビッグマッチが行われてきた“世界最高峰”の一つであるスタジアムのピッチに立つ、その価値は揺るがない。

「ここでプレーするのはすごく特別ですし、良い雰囲気だなと常に感じています」

 声援が選手へ最大限に届く設計にもなっていて、熱烈なミュンヘナーの声が彼女の背を押す。

「応援してくださるたくさんのサポーターのお陰で常にパワーを貰っていると感じ、自分自身を奮い立たせています」

 この日の試合は激しいフィジカルコンタクトも多かったが、谷川は「女子サッカーでも激しいバトルはスタンダード。白熱した試合展開を観て楽しんでいただけるように、常に勝ちにこだわって挑んでいます」と冷静に語る。

 同じくミュンヘンに住むトップチームの伊藤洋輝とも交流があり、異国でハイレベルな戦いの場に身を置く同士、支え合う存在が身近にいることも心強いはずだ。

 世界屈指のクラブであるバイエルン、そしてアリアンツ・アレーナという特別なステージ。その中心で、背番号18をつけた20歳の谷川萌々子は“バイエルンに欠かせぬ一員”として強烈な輝きを放っていた。

 すると続く11月20日の女子CLパリ・サンジェルマン戦、谷川は相手選手3人を置き去る鮮烈のゴールを決め、チームも3-1の勝利を収めた。

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 ミュンヘンを訪れるなら、男子だけではなく女子の試合にもぜひ足を運んでほしい。世界を相手に戦う谷川の姿は、必ず記憶に残るはずだ。

Photos and text by Midori IKENOUCHI