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【SAKANOWAコラム│FC BayernとMunichに恋して vol.1】モータースポーツからサッカーの世界へ足を踏み入れた1年目、魅了され続けて迎えた街を挙げての優勝祝賀会

マイスターシャーレを掲げる伊藤洋輝選手。(C)Midori IKENOUCHI

伊藤洋輝は電車の列になるラインダンスに加わり、谷川萌々子は…。

 2024-2025シーズンから、様々な偶然と幸運が重なって本業のモータースポーツからサッカーの世界へと足を踏み入れ、アリアンツ・アレーナを本拠地にFCバイエルン・ミュンヘンのブンデスリーガとチャンピオンズリーグのほぼ全試合の撮影をしています。

 何も分からないままポツンとヒトリで飛び込んだサッカーの世界ですが、超一流選手のプレーをピッチ間近で撮影するうちに、その魅力へ深く引き込まれていきました。

 今季のバイエルンは惜しくもDFBポカールやチャンピオンズリーグのタイトルを獲得できなかったものの、ヴァンサン・コンパニ新監督のもとでバイエル・レバークーゼンからブンデスリーガの王座を奪回できたのは大きな収穫ではないでしょうか。

 新緑の眩しい初夏の爽やかな5月18日、バイエルンの本拠地があるミュンヘン中心地のマリエン広場の市庁舎前広場で、ファンとの祝賀会とトーマス・ミュラーのお別れセレモニーが開催されました。

歴史あるミュンヘン市庁舎前が祝賀会会場に。C)Midori IKENOUCHI

 数多くの警察官が警備にあたる厳戒態勢で、事前に市庁舎で受け取ったメディア証明書を数々の警護の関門で掲示して、自宅から乗ってきたママチャリで通り抜けて行きました。

 開演の2時間以上前に私は会場に到着しましたが、すでにファンとミュンヘン市民が市庁舎前の広場は溢れ返っています。早速場所取りのために撮影用の『お立ち台』へ。数多くのフォトグラファーやTVクルーが先着していましたが、小さなスキマを見つけて了承を得て、センター一列目を陣取ることができました。

 今季はバイエルンの女子サッカーもブンデスリーガとDFBポカールの2冠を達成し、両チーム合同でのマイスターファイエル(優勝祝賀会)が開始されました。

 開始1時間ほど前から、DJやバイエルンの女子チームのマスコット ミアと男子のバーニーが会場を盛り上げ、選手入場の時をファンの皆さんはワクワクドキドキしながら待っていました。ちなみにこのマスコットたちは本当に大人気で、特にちびっこファンたちの瞳を輝かせてサインをねだったり、抱き着いたりする姿は本当にかわいらしく、バイエルンの選手も嫉妬してしまうかもしれませんね。

バイエルンの人気マスコット バーニー。C)Midori IKENOUCHI

 選手入場を前に『 Immer Vorwärts, FC Bayern(英語 Always forward FC Bayern)』のファン全員による大合唱が始まりました。本当にバイエルン・サポーターのチカラを強く感じる大合唱で毎回鳥肌モノです。

サポーターの名物団長 真冬でも試合中は上半身裸。C)Midori IKENOUCHI

 この合唱直後に市庁舎の裏手からバルコニーへ向かう中庭で、選手たちを撮影できる機会があり、そちらに急いで向かいました。どの選手も誇らしく、ちょっと恥ずかしそうに歩いて来るなか、ひとり無表情でうつむいてずっとスマートフォンをいじっていたがのミカエル・オリーズ選手でした。

 選手を出迎えたバイエルンのジュニアファンクラブの皆さんのことを無視する形になり、見かねたコンパニ監督がそれはダメだと思ったのか、オリーズ選手をぐっと掴んで子供たちの前に立たせていました。監督、ナイス! 私はちょうど目の前にいたので、監督に向かって思わず「ダンケ!(ありがとう)」と言うと、にっこり笑ってくださいました。

 いよいよ13時30分、女子・男子共にバイエルン地方の民族衣装ディアンドルに身を包んだ選手や首脳陣が市庁舎のバルコニーにひとりずつ手を振りながら入場してきます。先頭は女子サッカーチームのグロディス・ペルラ・ヴィゴスドッティル、男子(トップ)チームはマヌエル・ノイアーと、両キャプテンがマイスターシャーレを掲げて登場し、ファンが大歓声で迎えます。

We are the Championを熱唱中のケイン。C)Midori IKENOUCHI

 男子は選手がひとりずつ手渡しでマイスターシャーレを受け取り、ファンの前で頭上に掲げるのですが、入場の時に超不機嫌だったミカエル・オリーズ選手、実は彼だけがそれを拒否し、無表情のまま市庁舎の壁側に立ってスマホをいじっていました。ピッチ上ではとても仲間を思いやり、最高のアシストをする素晴らしい選手だけに、この日、一体何があったのでしょう??

 日本人選手では谷川萌々子、伊藤洋輝の両選手が参加。二人ともケガに苦しんだシーズンですが、タイトル獲得に貢献しており、大きな拍手を受けていました。

 谷川選手は大和なでしこの奥ゆかしさか、踊り狂う女子チームのチームメイトの弾けぶりを静かに微笑んで見ていました。一方、伊藤選手はコンラート・ライマー選手に抱き着いたり、祝賀会が盛り上がり音楽に合わせて男女のバイエルンのチームが肩を持って電車の列を作るとそのラインダンスに加わるなど、おとなしそうだったイメージが少し変わりました(笑)。

ファンに向けて手を振る谷川萌々子選手。C)Midori IKENOUCHI
マイスターシャーレを掲げる伊藤洋輝選手。(C)Midori IKENOUCHI

 モナコへ移籍するエリック・ダイヤーに続き、今季限りで退団するトーマス・ミュラーがマイクを握り、惜別のメッセージを語りました。

 幼少期から憧れていたバイエルンのジュニアから昇格し、アマチュアチームを経て2008年にトップチームに昇格。その後は常にトッププレーヤーとして、チームを牽引してきました。彼はいつもファンへの感謝を惜しまず、ちびっ子からシニアまでファン層は実に広いです。ファンのために、全てを歓喜に代えてきた存在でした。バイエルンでの最後も優勝を果たし、集まった全員を笑顔にしてみせました。

ファンへの感謝を述べるミュラー。C)Midori IKENOUCHI

 果たしてミュラー選手のようなバイエルンの象徴的な選手がまた現れるのか……楽しみでもあります。ヨシュア・キミッヒ選手が次期キャプテン候補との声も聞かれす。実際、今季は数多くの試合でゲームキャプテンを務めただけに期待が掛かりますね。

 楽しかった祝賀会はあっという間に2時間が経ち閉幕しました。バイエルンの選手たちは6月14日からアメリカで開催される新方式のFIFAクラブ・ワールドカップ(クラブW杯)に臨み、そのあと短い夏休みを迎えます。

 リーグ優勝が決まったあとバイエルンの選手たちはミュンヘン市内のクラブでパーティを行い、ミュラー、ノイヤー、キミッヒ、ゴレツカなど主力選手はプライベートジェットをチャーターし、イビサ島でパーティを行ったということです。さらにミュンヘン郊外の庶民的なスパ施設で、ミュラーら数名の選手が堪能していたのも目撃されています。ミュラーのミュンヘンでの最後の日々を一緒に楽しんだようです。

男女ダブル優勝メッセージを掲げるファン。C)Midori IKENOUCHI

 この市庁舎での祝賀会が、様々な祝宴のシメとなりました。その前日には今季最後のブンデスリーガのホッヘンハイムとのアウェーゲームがあり、チームバスでミュンヘンに帰郷したあと、選手たちによる祝宴が行われたそうです。

市庁舎前のオフィスビルはお休みですが、社員さんのご家族が集まっておられたようです 子供たちが書いたミュラーへのメッセージも貼ってありますね。C)Midori IKENOUCHI

 ちなみに、以前は優勝祝賀会のあとはスポンサーである地元ビール会社のパウラーナーが無料でビールを振舞っていたのですが、今年はありませんでした。

来年もまたここで祝賀会が開かれる事を願います。C)Midori IKENOUCHI

text and photos by  Midori IKENOUCHI