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【浦和-リーベル│現地発 戦評】全3失点 いずれもJ1リーグの次元を超えてきた。それでも松尾が決めた時間帯、シアトルに希望の光は射した

クラブW杯GS初陣、リーベル戦に先発した浦和のスターティングイレブン。写真:AP/アフロ

“Jリーグであれば”…。2失点目も単純なミスとは言えない。ただしインテル戦、勇猛果敢に挑めれば勝機はあるぞ。

[米国クラブW杯 E組 GS1節] 浦和 1–3 リーベル/2025年6月18日4:00(現地17日12:00)/ルーメン・フィールド(シアトル)

 アメリカ・クラブ・ワールドカップ(クラブW杯)グループステージ(GS)第1戦、浦和レッズは0-2から58分に松尾佑介のPKで1点を返して反撃ムードが高まったものの、そこから再び突き放され、リーベル・プレートに1-3で敗れた。

 浦和が喫した3失点は、いずれもJ1リーグの試合では遭遇したことのない、その次元を超えてくるクオリティだった。

 リーベルの全てのゴールが、“J1であれば”見られないものだった。つまり多くの選手が体感したことのない精度と質にやられた。

 スウェーデン代表MFサミュエル・グスタフソンは試合のあと、「浦和の最大のレベルを発揮できなかったことが悔やまれる」と語った。イタリア・セリエAやフル代表での戦いも経験しているだけに、日本最高峰であるJリーグとは異なる体感の基準を持っていた。

 だから、グスタフソンは一緒にトレーニングしてきている浦和の選手たちがこんなものではないし、最大値を発揮できていれば、リーベルの選手たちと十分互角以上にできたはずだと感じていたのだろう。

 ただ、Jリーグであれば、その対応で普段防げていたという局面で、リーベルはその予想を上回るクオリティで、ゴールを重ねていった。

 フランコ・マスタントゥオーノに起点を作られた12分の先制点のシーン。渡邊凌磨が途中でプレスをやめてしまう……これは彼のみならず浦和の選手たちにJリーグでも見られてきた対応で、マークを受け渡したつもりだったが、その一瞬緩む守備がここで出てしまい、そこを突かれた。

 石原広教は突破阻止を優先した守備で対応する。ただJリーグならば相手がミスやGKによって防げるキックをしてくれる可能性が高いのだが、マルコス・アクーニャにしっかりクロスを上げさせることになる。

 そのピンポイントクロスに対し、背後から飛び込んだファクンド・コリーディオのスピード、一瞬速いタイミング、破壊力と、それぞれ少しずつだがJ1よりも明らかに上回る三拍子揃ったレベルのヘッド弾を決められた。

 後半立ち上がり48分には、マリウス・ホイブラーテンの西川へのヘッドによるバックパスを、CFセバスティアン・ドリウッシに決められた。この場面も、決して“単純なミス”とは言えなかった。

 Jリーグであれば、無理をして、あそこに飛び込んでくる選手はいない。結果的に、このシーンでドリウッシはアキレス腱を傷めて交代を余儀なくされた。

 大会が進んでいれば、ドリウッシもそこまで無理をしていなかった可能性もある。誰もが重要だと認識していた大舞台の初戦、その一瞬の隙を狙われていた。

 ミスという以上に、ドリウッシの決断力、狡猾さ、勇敢さこそ称賛されるべきだろう。松尾佑介らレッズの攻撃陣がより高いレベルに向かうためにも、少なからず必要な要素だろう(キレイに崩すだけでは、スーパースター[軍団]でない限り、チームも個人もトップに行けない、というところで)。

 ただし0-2になったあと、リーベルは明らかにその強度を落とした。そこで金子拓郎のファウルからPKを獲得し、松尾がPKを決めた。さらにそのあと、リーベルの全体が間延びし、3対3に持ち込むなどチャンスになりかけた。しかしパスが短くなるなど、畳みかけ切れなかった。この60分あたりの時間帯は、一気呵成に行けそうだっただけに悔やまれた。

 するとコーナーキックから、再びアクーニャの高精度キックが炸裂。グスタフソンとダニーロ・ボザ、浦和がニアに配置した高い壁の間にスッとボールを落とされて、マクスミリアーノ・メサにヘッドで叩き込まれた。

 外国籍選手2枚の壁を攻略される。これもまたJリーグでは経験したことのない形での失点だった。

 マチェイ・スコルジャ監督は試合後、「リーベルは特に攻撃面でよく組織されていた。彼らのDNA、それはノンストップで攻撃すること。そのための素晴らしい選手を擁しています。今日の試合の難易度は高かったです」と、実際に目の当たりにした攻撃性に驚かされていた。

「しかし私たちはスペースを有効活用できること、素早く試合の重心を変えられること、相手のストッパーの背後のスペースを突くことを想定していました。後半いくつかの良い場面がありました。ゾーン1からの良いビルドアップのあと、例えばPKにつながった場面。これは私たちがやりたかったプレーの仕方でした」

 劣勢のなかでも、狙っていた形に持ち込めた。それだけに……アクーニャが守備の対応で明らかに嫌がっていた金子を71分でベンチに下げたのは、結果的に悪手となってしまった。

 あのまま右サイド主体の“右傾”にして攻め続けていれば、勝機が来たのではないか。そのあたり、交代策がほぼ同じで、Jリーグの試合と変わらず、ハマらないとことごとく負の連鎖を起こしてしまうマチェイ・スコルジャ監督の采配にも疑問が残ることになった。

 とはいえそこは指揮官の全選手への信頼が伝わってくる。それだけに、選手層という強化面の問題なのかもしれないが。

 浦和はGS第2戦、日本時間22日4時(現地21日12時)からイタリア・セリエA 2位のインテル・ミラノと対戦する。インテルは第1戦、CFモンテレイと1-1で引き分けている。

 UEFA欧州チャンピオンズリーグ(CL)とセリエA、二つのタイトルをあと1勝で逃し、クリスティアン・キヴ監督に交代した影響は明らかだ。その突破口を探ってくる本気のインテルに、浦和が挑む。

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 勝機はきっとある。シアトルに差したあの希望の光を、歓喜に変えられるチャンスがすぐに来る。とても楽しみだ。

Posted by 塚越始