INAC神戸一筋の髙瀬愛実が通算300試合出場。ストライカーの経験を生かしボランチ挑戦「頭を使ってサッカーが見えてきて、それがまた楽しい」
髙瀬愛実の通算300試合出場達成を、INAC神戸のチームメイトが祝福。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
2009年に北海道文教明清高から加入し17年目で到達。
INAC神戸レオネッサの髙瀬愛実が、国内リーグ公式戦300試合出場を達成した。WEリーグ10節のマイナビ仙台レディース戦で今季初めてスタメンに名を連ね、節目の記録に到達した。北海道文教明清高校を卒業した2009年に入団してから17年、神戸一筋で積み重ねた数字であり、女子サッカー界では特に重みのある到達点だ。
女子サッカーは年間試合数が少ないうえ、大ケガひとつでシーズンを棒に振ることもある。その環境下で、髙瀬は長期にわたり二桁出場、しかもほぼシーズン全試合出場を続けてきた。
「嬉しいです。先輩たちの節目のニュースを見るたびに憧れもあり、無意識のうちに自分も意識していたのかもしれません」
今季3節で通算350試合に到達した上尾野辺めぐみ(アルビレックス新潟レディース)は、なでしこジャパンでも共に戦った仲間だ。髙瀬はその背中を追い続ける。
順風満帆ではなかった。ケガに苦しみ、2011年以降には澤穂希や大野忍らビッグネームが加入し、クラブは黄金期へ向かう。そのハイレベルな競争を生き抜き、出場機会を掴んできた。
34歳になった今は、特にコンディション維持と向き合っている。
「がんばりたくても痛みがあったらがんばれない。でも痛くてもやらなきゃいけない時もある。もし“痛いからやらない”を選んだら、私はそこで引退です。だからやるしかない(笑)」
経験を重ねた彼女が、いま最も重視するのはメンタルだ。
「年齢を重ねるほど心と身体のつながりを実感します。若い頃は心がプレーを左右していたけれど、今は身体が元気なら心も元気。身体が痛くなければサッカーは本当に楽しい。健康って結局そういうことなんだと思います」
タイトル争いを毎年続けるクラブで300試合に届く道のりは険しかった。
「めちゃくちゃ長かったです。正直、達成できないだろうなと思った時期もありました」
節目の一戦で、髙瀬はFWではなくボランチとしてスタメン出場した。宮本ともみ監督は、自身もなでしこでボランチを担った経験を持つ。
宮本監督は「300試合だからという忖度はありません。練習で彼女のプレーが良かった。だから選びました」と言う。
練習でもボランチでのプレーが増えており、髙瀬はその期待に全力で応えようとしている。
「いつも不安なんです。みっちーさん(宮本監督)から意図や役割を細かく言われるんですけど、『一生懸命やっているけれど……頭、使えていますか? 私大丈夫ですか?』って聞きたくなるくらい(笑)。」
INAC神戸の中盤は試合展開によって形が大きく変化する。攻撃に振り切る時間帯になると、髙瀬は前線へ飛び出し、持ち前の得点感覚でゴールを狙う。そのメリハリが、チームの武器になっている。
「頭を使ってサッカーが見えてきて、それがまた楽しいんです(笑)」
関連記事>>【なでしこ】現地取材&検証:谷川萌々子が責任を痛感したスペイン戦の失点、背景にあったチームとしての挑戦
神戸一筋で歩んできた高瀬はさらに進化を遂げ、クラブと共に、また新たな領域を切り開こうとしている。





