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ギムナジウムに通うレナート・カールがバイエルンのCL最年少ゴール。17歳の新星、文武両道を体現【ドイツ発コラム│FC BayernとMunichに恋して】

バイエルンの17歳の新星レナート・カール。(C)Midori IKENOUCHI

伊藤洋輝と守田英正は試合終盤に出場。

 レナート・カールにとって、この一夜は特別な舞台となった。

 厳しい寒さが続いていたミュンヘンだったが、この日は日中の気温が10℃まで上がり、空気の澄んだ穏やかな夕暮れが広がっていた。そんななか、アリアンツ・アレーナで行われたUEFA欧州チャンピオンズリーグ(CL)の一戦、17歳のカールは再びスターティングイレブンに名を連ねた。

 対戦相手はポルトガルの強豪、スポルティングCPだ。プリメイラ・リーガで上位を争う難敵を前に、カールは立ち上がりから積極的なプレーを披露。試合開始5分、力強いフィニッシュでネットを揺らしたかに見えたが、直前のパスがオフサイドとなり得点は幻に。それでもカールの存在感は際立ち、何度もゴールに迫る場面を作り出した。

 後半に入っても、試合の流れを引き寄せたのはカールだった。スタンドでは赤白の発煙筒が焚かれ、視界が白く煙る異様な空気に包まれるなか、バイエルンは一時ビハインドを背負う。しかし65分、セルジュ・ニャブリのゴールで流れを引き戻すと、69分、カールが決定的な仕事を果たす。冷静かつ大胆なフィニッシュでゴールを奪い、スタジアムの熱量を一気に引き上げた。

 試合はその後もバイエルンが主導権を握り、逆転に成功。76分、ラファエル・ゲレイロとの交代でピッチを後にする際、カールには自然とスタンディングオーベーションと大きな拍手が送られた。その輝きは一過性のものではないことを、誰もが確信する瞬間だった。

 このゴールにより、カールはチャンピオンズリーグ史上最年少、17歳290日での得点という歴史的快挙を達成。世界屈指のクラブ、バイエルンのスタート11として堂々とプレーし、新たな1ページを刻んだ。なおカールは現在もクラブの育成施設「Camps」内の寮で生活し、試合のない日はギムナジウムに通う日々を送っている。

 バイエルンの伊藤洋輝、スポルティングの守田英正はいずれも試合終盤にピッチに立ったが、マッチアップする機会はなかった。ポジションは異なるものの、彼らにもスポットライトが当たる日を期待したい!

 世界最高峰の舞台で躍動しながら学業にも励む姿は、まさに文武両道を体現する存在だ。試合翌日の朝、レナート・カールは何事もなかったかのように学校へ向かったのだろうか。その背中には、すでに未来のスターの風格が漂っていた。

photos and text By Midori IKENOUCHI