齊藤未月、橋岡大樹、山田康太…ピッチ上の作戦会議で下した決断とは?
タイ戦でフル出場したU-19日本代表の齊藤未月(6番)。(C)AFC
U-19日本代表がタイに3-1とリードを保って試合終盤に突入し――。
[U-19アジア選手権 GS2節] U-19日本代表 3-1 U-19タイ代表/2018年10月22日/パカンサリスタジアム(インドネシア)
U-19日本代表がU-19タイ代表に3-1で勝利を収め、グループステージ1試合を残して、いち早く準々決勝進出を決めた。その後半途中に一旦プレーが止まったとき、橋岡大樹が「康太! 康太!」と山田康太を大声で呼び、さらに近くにいたキャプテンの齊藤未月にも声を掛けて、3人による緊急の作戦会議が行われたシーンがあった。
もちろん、そういった光景は試合中に見られることだ。ただ短時間で課題を出し合い、状況を把握し、ひとつの決断を下す。その作業をスムーズに行い、結果的にその後のリスク管理も徹底されたさまは、まさに作戦会議そのものだった。
「相手(タイ)もボールをつなぐのが本当に上手く、(橋岡)大樹とは何度も話し合い、自分がどこまでプレスにかけに行くべきか、下がったほうがいいかと話し合っていました」
キャプテンの齊藤は試合中、そのようにDFリーダーの橋岡と確認を続けたという。そして後半途中、3人で話し合いを行ったときのことを説明する。
「(話し合ったあとは)相手は前線に3枚を残していました。勝ちに行くならば、(ボランチの山田)康太を行かせないで、ボランチ2枚(齊藤と山田)でリスク管理して、そこでボールを奪って前へ行ければという話をしました。康太も前への推進力があって点に絡むのも得意な選手ですけれど、そこはもう割り切って、戻って対応しようという話をしました」
もちろん、山田が攻めに行きたいという気持ちを尊重していた。そのなかでタイの3人、4人を前線に残す捨て身の攻撃をしてきたことで、「考えながらずっとプレーしていたなか、康太を下げようという決断をしました」と、あくまで勝利=勝点3にこだわったと言う。
一方、齊藤や前線の選手はDF陣にラインを上げてほしいと要求したものの、なかなか意思統一できずにいた時間帯もあった。最終ラインとしてはタイのスピードに対し、裏のスペースを与えることのほうがリスクも高いと判断していた。一方、できるだけ高い位置で試合を進めたほうが、よりセーフティだという考え方。そのあたりの擦り合わせは今後必要かもしれない。
とはいえ日本の影山雅永監督は「選手たちはとにかく、いろんなときに活発に意見を交わし合っている」と彼らのサッカーに対する真摯な姿勢に目をみはる。そんな姿勢がピッチ上でも表現された一幕だったと言えた。
試合が終わった直後にも齊藤は左サイドバックの東俊希(サンフレッチェ広島)とも、味方が戻る時間を作るための守備について話し合ったという。
安部裕葵(鹿島アントラーズ)、齊藤、橋岡ら10代にしてJリーグの主力を務める選手が多く、U-19日本代表は強烈な個が揃っている集団だと言われる。そんな彼らが寝食をともにし、まさにサッカー漬けの日々を送るなか、それぞれが「結果」を残すために、一つひとつについて話し合い高め合っている。選手としての技術のみならず、その姿勢も含めて、まさにプロフェッショナルとしてのレベルを今この時も上げている。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI