「時が止まった」U-19日本代表のスーパーゴールはこうして生まれた
U-19日本代表がU-20W杯へ! ゴールを決めた東(2番)を祝福する伊藤(7番)、齊藤(6番)ら。(C)AFC
約30メートルを左足で突き刺した東は「自分でもビックリ」。
[U-19アジア選手権準々決勝] 日本 2-0 インドネシア/2018年10月28日/ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム(ジャカルタ)
5バックで守りを固めてきたインドネシアに対し、日本はなかなか突破口を見出せずにいた。テクニカルな2トップの久保建英(横浜F・マリノス)と宮代大聖(川崎フロンターレU-18)が突けるスペースがほとんどなく、日本のベンチからもサイドから攻略するように指示が出ていたという。
日本は両サイドバックも高く位置取り攻勢を強める。ただ、スピードあるアタッカーを配置するインドネシアのカウンターを食らうリスクも負い、スリリングな展開が続いた。インドネシアのカウンターが発動すれば、たちまちスタンドを揺るがす6万人の熱狂的な声援が轟くなど、日本の選手たちへのプレッシャーも相当だった。
そんななか迎えた40分、右サイドバックの菅原由勢(名古屋グランパス)とのパス交換から伊藤洋輝(ジュビロ磐田)が、左へサイドチェンジする。
伊藤は振り返る。
「真ん中の守備がすごく固かったので、『サイドから攻めろ』という指示も出ていました。(東)俊希(サンフレッチェ広島)がすごくいいポジションで。ワンタッチの置きどころも良くて、『あ、打つな』と思いました」
そして東が左足を振り抜いた瞬間――。
「時が止まりました」
伊藤は「本当にそんな感じで、ずっとボールを追いかけていたんです。そしたら、ゴールのすごいところに決まりましたね」と驚いた。
インドネシアのGKはジャンプしたものの届かず。ボールは光線のように一筋に逆サイドのゴールネットへ突き刺さった。
「ゴールが決まったあと、あいつが最初に俺んところに来たんですけど、『やっばーーい!』って飛び込んできました。実際、本当にやばいゴールでしたね」
ゴールを決めた東自身も「自分でもビックリした」と語る。
「自分でもビックリしています。あのポジション(スペース)が空いていると思っていて、自分がそこに入っていけたら打とうと決めていました。でも、打っていって本当に入ったので、それはビックリしました」
何より伊藤のパスを受けた瞬間、ひょっとしたらという感触は得られたそうだ。
「ファーストタッチは意識していています。次のプレーも上手いプレーができると思いました」
中央を固く守られ、サイド主体の攻撃にシフト。相手を引き出すためにも、と狙っていった東の左足が閃光を放ち、ゴールネットを揺らした。約30メートルはあるスーパーショットだった。
「俊希のスーパーゴールでしたけれど、ひとりの選手に対し複数の選手がマークしてくるインドネシアに対し、うまくサイドチェンジができたからこそ生まれたゴールだと思いました」
そのように伊藤は分析していた。
この一撃で選手のみならず6万人を超す大サポーターを含めたインドネシアに与えたダメージは大きかった。こうして東の一発が、U-20ワールドカップ出場への道を切り開いた。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI