イラオラ・リバプール、スロット体制から3つの変化とは? 「ヘヴィメタ」回帰か
リバプールのイラオラ監督。写真:AP/アフロ
一方で“不変”も。プレシーズン4試合から見えた新スタイルとは――。
イングランド・プレミアリーグのリバプールFCは、アルネ・スロット前監督からアンドニ・イラオラ新監督へ指揮官が交代した。プレシーズンの4試合を終え、早くも新指揮官のカラーが随所に表れている。イギリスメディア『BBC』は8月10日、「イラオラ監督下でリバプールはどのようなチームになりつつあるか」と題した戦術分析記事を掲載。イラオラ体制のリバプールに見られる3つの変化、一方でアルネ・スロット前体制下と変わらない点などをレポートしている。
イラオラは、ユルゲン・クロップ元監督時代にアンフィールドを沸かせた「ヘヴィメタル・フットボール」に近いスタイルの持ち主とも評される。
プレシーズンではサンダーランドAFC、レクサムAFCに勝利した一方、リーズ・ユナイテッドFCとASモナコには、いずれも2点のリードを守れず逆転負けを喫した。4試合という限られたサンプルではあるものの、『BBC』の分析からは大きく3つの変化が見えてくる。
まず1つ目が、ボールを保持しながら「自らカウンターを作り出す」攻撃だ。
リバプールはGKと4人のDF、さらに1、2人のセントラルMFを低い位置に配置し、ショートパスから組み立てる形を採用している。
プレシーズンではドミニク・ソボスライとトレイ・ニョニが低い位置に下がってボールを受け、そこから相手を引き出す。プレスを掛けてきたところで一気に前方へボールを送り、空いたスペースを突いていく。
相手が最初から強くプレスを掛けてくれば、GKアリソンやギオルギ・ママルダシュヴィリから迷わずロングボールを選択。最初の競り合いで勝てなくてもセカンドボールを狙い、陣形の乱れた相手の中央を攻略する。
イラオラがAFCボーンマスで得意としてきた高速かつ縦へのカウンターを、よりボールを保持することが求められるリバプール仕様に落とし込もうとしている。
2つ目が、サイドでの流動的な「三角形」だ。
イラオラが指導者として影響を受けてきた一人が、アスレティック・ビルバオ時代の恩師マルセロ・ビエルサ氏だ。
そのビエルサのチームと同様に、イラオラ体制では選手を特定のポジションに固定せず、サイドバック、ウイング、MFが互いの位置を入れ替えながら局面を攻略する。
左サイドではリオ・ングモハ、あるいはコーディ・ガクポにサイドバックが絡み、さらに主に「10番」のポジションを務めるフロリアン・ヴィルツも流れてくる。2対2、3対3という局面を意図的に作り、選手同士のローテーションによって相手のマークを混乱させる狙いがある。
3つ目が、より明確になったハイプレスだ。
プレシーズンでは4-4-2の中盤ダイヤモンド型でプレスを掛ける場面が多く見られた。まず相手にショートパスでのビルドアップを促し、そこから強度を一気に上げてボールを中央へ誘導して奪い切る。
そのなかで重要な役割を担っているのがソボスライだ。昨季は前線から中盤、右サイドバックまで様々なポジションで起用されたが、イラオラ体制では主にセントラルMFとしてプレーしている。
ソボスライが前へ出てプレスを掛けた際、その背後をアンカーや最終ラインが連動してカバーする。運動量と判断力を備えたハンガリー代表キャプテンが、新たな守備戦術のキーマンになっている。
一方、スロット体制から変わっていない“弱点”もある。
攻撃時には両サイドバックに加え、中盤3人のうち2人、さらに前線3人が高い位置まで押し上げる。その結果、ボールより後ろに残るのがCB2人と守備的MF1人だけになるケースもあり、ボールを失った瞬間にカウンターを受ける危険性を抱える。
実は昨季のスロット体制でも、リバプールは高速カウンターへの対応に脆さを見せていた。
イラオラは攻撃の「カオス」を維持しながら、より試合をコントロールする必要性を認めている。しかし、自身のこれまでのスタイルを踏まえると、攻撃時に6、7人を前へ送り込む姿勢そのものを大きく変える可能性は低いと『BBC』は見ている。
そのリスクを抑えるカギになるのが、ボールを失った直後の強烈なカウンタープレスだ。
ただし、現段階では完成には至っていない。イラオラ自身もモナコ戦後、求める強度を維持できていないとして、さらなる改善が必要だと認めている。
まだプレシーズン4試合とサンプルは限られているものの、イラオラの刻印はすでに随所に見られる。
高速かつ縦へのダイナミックな攻撃とハイプレス。一方、ボールを長く保持することを求められるリバプールで、その「カオス」と「コントロール」をいかに両立させるのか。そうした新たな戦術のなか、日本代表MF遠藤航がどのような役割を担っていくのかも注目される。
ただし、前掛かりになった際のカウンターへの脆さという課題は“不変”でもある。そこをイラオラがどのように解消していくのかが、新シーズンのポイントになりそうだ。
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