前園、中田英、岡野…川口能活が引退会見で語った「決まって最も嬉しかったゴール」とは?
川口(左)のSC相模原への加入のキッカケを作ってくれたのが、同郷でもある望月重良社長(右)だった。(C)SAKANOWA
世界への扉を開いた二つのゴール。
元日本代表でSC相模原に在籍するGK川口能活が11月14日に引退記者会見を行い、25年間のプロキャリアで最後尾からチームを見守り続けてきたなか、「決まって嬉しかったゴール」を挙げてもらった。
川口は少し考えてから、「いくつもあるんですが……」と、その中でも厳選の二つのゴールについて語った。
一つ目が1996年3月24日、アトランタ五輪アジア最終予選の準決勝・サウジアラビア戦だ。
「一つは(アトランタ)オリンピック出場を決めた、マレーシアでのサウジアラビアとの準決勝です。2-1で勝った試合の2点目。前園さんが伊東輝悦さんとのパス交換から決めたゴールです」
そして二つ目が、1997年11月16日のフランス・ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選、イランとの第3出場国決定戦。『ジョホールバルの歓喜』をもたらした、あの一撃だ。
「それから、ジョホールバルでの中田英寿のミドルシュートから、岡野さんがこぼれ球を押し込んだゴールです。この二つのゴールは、世界大会に出るために必要なゴールであり、決めてくれたゴール。僕のサッカー人生でも、掛け替えのないゴールになりました」
彼はそのように振り返った。
日本としては28年ぶりでありJリーグ誕生から初めての五輪出場権、そして初のW杯出場権、改めてになるが、まさに世界への扉をこじ開けたその2試合のゴールマウスに、川口がいたことに、偉大な存在であることを感じる。彼がゴール前で負っていた重圧は誰にも理解できないものだっただろう。それを開放へと導いたゴールでもあった。
五輪とW杯出場――その切符を手繰り寄せた、痺れる二つのゴール。日本中が歓喜に沸いた。ただ、誰よりも嬉しかったのは(もちろんすぐ気を引き締めなければならないが)、ピッチ上で日本の最後尾にいた守護神・川口だったと言っていいだろう。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI