【原口元気インタビュー・前編】クラブW杯で流した涙「レベルが違った。もう一度ヨーロッパで仕事をしたいと思った」。浦和での挑戦に一つの区切り ベールスホットで1部昇格へ挑戦
開幕のヘントU23戦でボランチとしてフル出場したベールスホットの原口元気。“Box to Box”の動き出しから得点ももたらした。写真:Belga Image/アフロ
開幕戦では飛び出しからのヘッドでゴールを引き出す。35歳ボランチコンビ「しっかりゴール前に入っていけるぐらい、まだ元気」
元日本代表の原口元気が再びヨーロッパに渡った。新天地に選んだのは、ベルギー2部のKベールスホットVA。浦和レッズから移籍して2シーズン目、1部昇格を目指すチームの中心を担う一方、若手との向き合い方や指導者ライセンスの取得など、その視線は現役生活の先にも向けられている。
35歳での新たな挑戦の日々、アントワープでの生活、そして欧州復帰を決意するきっかけになったクラブワールドカップでの涙――。原口がベールスホットで充実した現在を過ごす理由と、1部昇格に懸ける思いを語った。
◇ ―― ◇ ―― ◇
――ベールスホットは8月16日のベルギー2部リーグ開幕戦、ヘントU23にホームで4-0の快勝を収めました。原口選手は4-2-3-1のボランチでフル出場。最高のスタートを切れましたね。
「はい、いいスタートを切れたと思います。プレシーズンから手応えはすごくあって、1部のチームや他国リーグのクラブとの試合でも、ほとんど勝っていました。自分たちより少しレベルの高い相手にもいいゲームをして結果が出ていたので、自信を持ってシーズンに入れました」
――チームの2点目は、原口選手がポケットに飛び出し、ヘディングで折り返した流れから生まれました。さっそくゴールにも絡みました。
「結果だけを見ると良かったんですけど、前半に関しては、開幕戦特有の硬さが出てしまい、チームとして理想的な形で進められなかったという課題はあります。ただ、昨シーズン不足していたゴール前の効率性みたいなものが出てきています。もともとビルドアップやボールポゼッションが得意なチームで、試合を支配するのは得意だったんですけど、ゴール前の効率性が課題でした。プレシーズンに続き、公式戦となった開幕戦でもその改善が見られたことは、目標としている1部昇格に向けて、プラスだと感じています」
――原口選手は“ボックス・トゥ・ボックス”の役割も担っている?
「オープンな展開になれば、そうなると思います。前半は、なるべくバランスを見ながらプレーしていますが、後半になってスペースが空いてくれば、僕もスプリントは得意なので、あのようなシーンは増えると思います」
――なるほど。そういう走りは厭わないと。
「僕のボランチの相方も開幕戦で得点しましたし、2人とも走力があるタイプなので、そこで厚みを出していくことが、ゴール前の効率性にもつながると思っています。僕ら2人とも35歳ですけど、しっかりゴール前に入っていけるぐらい、まだ元気なので(笑)。2人の連係には、僕自身も好感触を得ています」
――今回のインタビューでは、ベールスホットを日本に紹介するとともに、「原口元気とともにベルギー1部へ行こう!」をテーマに、お話を聞かせていただければと思います。まず、2年目を迎えたアントワープでの生活はいかがですか。
「非常に充実しています。家族も気に入ってくれています。公私ともに充実しています。このチームが好きで、街もいいですし、すべてが順調に進んでいます」
――ベルギーはオランダ語、フランス語、ドイツ語が話され、英語も広く使われていると聞きます。普段はどのようにコミュニケーションを取っていますか?
「基本的にみんな英語を話せます。ここはオランダ語圏ですけど、僕は今も英語をしっかり勉強しています。1年経って、だいぶスキルも上がってきたので、もう一歩、上手くなれるように学んでいます」
――どのような形で?
「6か月間、アントワープの大学にある英語コースに通い、ほかの生徒たちと一緒に授業を受けていました。その半年間で、まず文法を一通り勉強できました。今は週に1回、講師の方からレッスンを受けていますが、基本的には独学です。
英語を話す機会はたくさんあります。チームメイトと話していて英語で言えなかったことをメモし、復習して、もう一度使ってみる。その繰り返しが一番効率的だと感じています」
――ベールスホットのチームについて聞かせてください。この開幕戦で1勝できて、ホッとしていますか?
「まだ28試合のうちの1試合ですからね。たぶん昇格して初めてホッとできるものだと思います。昨シーズンは本当にあと一歩のところで上がれなかったので、今季はプレーオフに回らず、ストレートで昇格できるように、1試合1試合を大切に戦っていきたいです。今はまだ、全然ホッとできる状況ではありません。本当に長いシーズンの始まりにすぎません」
――ゴールパターンも多彩でした。さまざまな可能性を秘めたチームという感じですか?
「どちらかというと、今のチームは現実的というか、ベテランの選手も多く、しっかり昇格するというミッションをクリアするための構成になっています。そのミッションを果たさなければ、新しいストーリーは始まりません」
――最高のスタートを切りましたが、課題といいますか、ベールスホットのテーマは、どういうところになりますか?
「このスタイルをぶれずにやっていくこと。昨シーズンから監督が変わっていないので、積み上げてきたものはたくさんあります。特にビルドアップや攻撃のストラクチャーは、他のチームよりも高いレベルにあると感じます。ただ、少し足りなかったのは、ゴール前の効率性でした。今シーズンはそれが改善されつつあるので、この形でぶれずに進んでいくことが大切になります」

――原口選手は、どのような役割を担っていく覚悟ですか?
「どのような試合でも、90分間、チームをまとめ上げながらゲームをコントロールし続けて、プレッシャーのかかる試合であっても、違いを作りたい。基本的には、ゲームをコントロールし続けることが僕のテーマですね」
――復帰した浦和でもよく見られた光景でしたが、今は主力・サブを問わず、いろいろな選手と話をしている?
「めちゃくちゃコミュニケーションを取ります。中心選手や同世代の選手たちとはもちろん仲がいいですけど、若い選手たちとも練習後に一緒にボールを蹴ったりしています。僕自身も、どうコーチングしたら選手が伸びるのかなということに興味があります。選手の立場であるとともに、セカンドキャリアも考えながら取り組んでいます」
――経験を積んできて、視座が変わってきた感じですね。
「次のフェーズに行く準備もしている感じです。こっちでの指導者ライセンス取得という新たなチャレンジも始まる予定で、それは僕自身も非常に楽しみにしています」
――元気自身のことも、チームのことも、俯瞰して見られるようになった印象を受けます。
「浦和でプレーしていた昨年までは、自分がどう活躍するかにフォーカスしていた部分がありました。でも今は、チームがどうすれば上手くいくか、若い選手がどうすれば伸びるかを考えるフェーズにも入っています」
――その浦和からベルギー行きを決断したところについて、少し詳しく聞かせてください。昨年のクラブワールドカップを現地で取材させてもらいましたが、モンテレイに敗れたあと、レッズサポーターの声援を受けたなか、原口選手は涙を見せていました。あのクラブワールドカップは、原口選手のサッカー人生において、どのような意味を持つ大会でしたか。また、あの涙にはどのような思いが込められていたのでしょうか。
「やはりクラブワールドカップでもう一度、世界の強豪たちと戦ったことによって、『もう一回、世界に戻ろう』『もう一回ヨーロッパに戻って仕事をしたい』という気持ちに切り替わったのは間違いありません。あの3試合を通じて、やはりレベルが違いましたし、僕らも上手く戦っていたと思いますけど、結局ゼロポイント(勝点0)に終わりました。あの大会を機に、浦和での挑戦には一度区切りをつけ、ヨーロッパに戻りたいと思いました」
――日本ではなかなか話題になりませんでしたが、本当に楽しい大会でしたね。取材していても、特別なステージだと感じました。
「そうですね。刺激的な大会でした。特にインテルの戦い方は分かりやすく、洗練されたヨーロッパの一流クラブのサッカーだと感じました。一方、リーベルやモンテレイには、僕があまり経験したことのない戦い方や、南米独特の雰囲気がありました。そうした世界のサッカーに触れたことが、もう一度、日本を出て学びたいと考えるきっかけになりました」
――そこからベールスホットを選ぶまで、どういった経緯があったのでしょうか。ほかにも話や選択肢があったと思うのですが。
「いろいろな知人を通じて、ヨーロッパに戻る手段を探し始めていました。最初はドイツ語圏内に戻ろうとしていたんですけど、なかなか条件のいいクラブがなかった。その中で、本当にウインドーが閉まる直前、あるところからベールスホットの話を聞いて、逆にこっちからアプローチしたという感じでした」
――そこは興味深いです。どういったところに魅力を感じたのでしょうか。
※後編に続く (8月22日に公開予定)※※
後編では、原口がベールスホット移籍を決断した舞台裏に加え、新たなプレジデント(代表取締役)に就任した大野祐介氏とのやり取り、ポープ・ウィリアムとの意外な関係、そしてセカンドキャリアへの思いについて語ってくれています。

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