チャナティップへ直撃。タイにミシャスタイルは合わないか?
札幌のチャナティップ。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
4-4-2に必須な体格差のハンディを、技術と運動量で補える3-4-2-1。
北海道コンサドーレ札幌のタイ代表MFチャナティップは、昨季J1リーグ30試合8ゴールを決めてチームの過去最高となるリーグ4位進出に貢献し、タイ人初のベストイレブンに選ばれた。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の特殊と言えるスタイルに、どのように取り組み、順応していったのか。昨シーズン途中に取材した際、チャナティップは次のように語った。
「いろんな監督のもとでプレーしてきて、これまで『これで大丈夫なのか』と感じこともありました。ミシャ(ペトロヴィッチ監督の愛称)のもとでは、キャンプの時にまだよく分からなず、戸惑ったりもしました。でも、シーズンが入ってから、文句のようなことを言うことはありませんでした」
何よりミシャのスタンスが、チャナティップと”合った”という。
「監督からいつも言われているのは『楽しんでプレーしてほしい』ということ。自分も毎日楽しんでできています。それに例えビッククラブであっても、どんなチームでも怖がる必要はないとも。実際、どのチームとも変わらず戦えています」
ミシャシステムについても聞いた。4-4-2システムは、センターバックに絶対的な高さや強さが必須になるなどポジションごとの特長が求められる。それに対し、ミシャ式の3-4-2-1は体格的なハンディを全員の運動量と技術で補える点が一つの特性に挙げられる。
小柄だが高い技術を有すタイ人選手に、まさにミシャスタイルは合っているのではないか? そんな質問をしてみた。
「うーん、タイの選手に合いますかねえ」
チャナティップは否定的というか、タイのチームで取り組むことは難しいのではないかと感じていた。
例えばチャナティップが将来指導者となったとしたら、タイのチームで「ミシャスタイル」を採用することはないか? 昨季途中の段階で、彼は次のように答えた。
「それは、まだちょっと難しいように感じます。なぜなら、練習の段階からハードワークが求められます。ハードワークができないと、この組織的なサッカーはできませんからね」
全員でのハードワーク――。札幌では全ての選手が当たり前のように取り組み、全員が連動し合っている。しかし、それが実はとても大変で決して簡単ではないと、チャナティップは実感していた。
今回のアジアカップでも活躍し、タイ代表のベスト16進出に貢献した。そしてこれからは札幌に合流し、Jリーグの開幕に備える。日本とタイをつなぐ一番の架け橋と言える存在である。
果たして2年目のペトロヴィッチ監督のもと、チャナティップが札幌でどのような進化を遂げていくのか。2019年もその躍動感あふれるプレーから目が離せない。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI