日本代表GKシュミットが乗り越えた天皇杯決勝の「傷心」
シュミット・ダニエル。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA
二度続いた準優勝。優しも逞しさも一回り増したプロ6シーズン目、タイトルが現実的な目標に。
ベガルタ仙台のGKシュミット・ダニエルが、プロ6シーズン目を迎える。
UAEアジアカップ2019に向かう前に取材させてもらった際、彼は「1週間ほど休んで、練習を再開しました。オフはちょっと事情があり、ずっと仙台にいました」と語っていた。1月2日に第二子の次女が誕生したことが、このほど発表された。なるほど、長女と妻のもとにずっと寄り添っていたのだ。
12月9日、クラブ史上初の主要タイトル獲得を懸けた埼玉スタジアムでの浦和レッズとの天皇杯決勝は、0-1で敗れた。わずか1点差だ。しかし、あまりに遠かった1点。この試合にフル出場したシュミットは、次のように語っていた。
「決勝が仙台でのシーズン最後の試合になってしまい、次に試合がありませんでした。だから、その分、今回は引きずってしまいました。まあ……悔しかったし、残念でした。1週間休んだことで、なんとか気持ちも切り替えていけました」
むしろ、そこから日本代表での戦いを迎えたことが幸いし、自然と頭も体もモードを切り替えていけた。
「とにかくチームに貢献できるように。(GK)ずっとこの3人(東口順昭、権田修一)でやってきて、よりいいゴールキーパーチームとして大会に臨み、合宿からお互いに切磋琢磨して、レベルアップして、大会に臨みたいです」
そのように決意を示していた彼は、次女の誕生に立ち会ったあと、日本代表としてアジアカップを戦うためUAE(アラブ首長国連邦)に飛んだ。グループステージ3戦のウズベキスタン戦ではフル出場し、試合終了間際のビッグセーブでピンチを凌ぎ、2-1の逆転勝利に大きく貢献した。
ただ、ピッチに立てたのはその1試合だった。
そして、立場や悔しさは異なるものの、結果的に、天皇杯、アジアカップと立て続けに「準優勝」に終わってしまった。
頂点は目に見えている。目の前だ。挑戦権も得た。しかし……日本一もアジア王者の座も、あと一歩届かなかった。
これからは仙台にとって、「タイトル」が現実的な目標になっていく。ただし、上位も十分狙えるが、一歩間違えれば……という怖さも隣り合わせにある。
仙台にはシュミットがいる。この年末年始にタフな経験を積み、新たな家族に恵まれた、優しさも逞しさも一回り増した身長197センチの最後の砦が、チームの勝利のために体を張り、ゴールを守る。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI