J育成プロジェクトでイングランドの敏腕2人が着任
写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
アカデミーへの投資を喚起し、「コーチの指導者」育成にも力を入れる。
Jリーグは2月13日、育成重点施策「PROJECT DNA」を発表した。今季から新たに打ち出した施策「2030フットボールビジョン」の一環。前日のJリーグアカデミーダイレクターの会議、同日行われたJリーグ実行委員会でその概要が説明された。
Jリーグは、これまでの日本の育成の良い面を継承しつつ、枠組みや構造から改めて見つめ直し、「選手や指導者の資質を紡いで、ワールドクラスの選手を育て輩出したい」と方針を示す。そのなかでイングランドのウェストハム・ユナイテッドのアカデミーなどで実績のある、テリー・ウェストリー氏(肩書はJリーグフットボール本部テクニカルダイレクター・コンサルタント)、アダム・レイムズ氏(フットボール企画戦略ダイレクター)が着任。今後日本とイングランドに約1か月ずつ滞在し、Jリーグの意思決定機関にあたる「育成リーダーシップチーム」に加わる。
ウェストリー氏はイングランドが2017年にU-17、U-20の両ワールドカップ優勝へとつなげた「育成改革プランEPPP」の設計と発動をさせた実績を持つ。また、ウェストハムなどのアカデミー責任者として、クラブに285億円の利益をもたらしたという。そのなかで、「指導者の指導者」にあたるヘッドオブコーチングも5年間務めた経験がある。
一方、レイムズ氏は、ウェストハムのユナイテッドアカデミーの最高責任者を担当。同クラブのアカデミーを運営し、オフザピッチの仕組みづくりをしてきた。アカデミーに投資することで、クラブに大きな利益がもたらされることを実現してきた、育成戦略の第一人者だ。
すでにこれまで3年間Jリーグのアカデミーのワークショップなどにも携ってきたウェストリー氏は、次のように抱負を語った。
「このプロジェクトはイングランド流ではなく、Jリーグと各クラブがしっかり関わって共同作業として進めていきたいと思います。Jリーグがこの育成改革をもたらしたいという2030年に向けたビジョン、発展したいという情熱を感じ、ぜひ携りたいと思いました。選手育成のプロセスに新たな進展をもたらし、Jリーグから世界トップクラスに多くを輩出するリーグにしたい。そのためには世界トップクラスの指導者の育成も大事になります。そこに焦点を当てて活動していきたい」
また、レイムズ氏は次のように語った。
「アカデミーダイレクター会議とJリーグ実行委員会で話をさせていただきましたが、アカデミー・育成への投資は必ずクラブに利益がもたらされます。そのためにJリーグとともに、クラブとアカデミーをしっかりサポートしていけるように活動できればと思います。このタイミングで、このプロジェクトに携われて、とてもエキサイティングで、光栄に感じています」
Jリーグの原博実副理事長は、このプロジェクトの狙いについて次のように語った。
「Jリーグとしてビジョンを持って、システムを作り、大きな視野で、クラブではできないところをサポートしてたい。勝った、負けたよりも、『個』が育つリーグにしたい。そのために彼らの経験を生かし、力になってもらいたいと思いました。もちろん日本の育成の良さもあり、クラブと一緒に取り組んでいきたいと思います」
良い指導者を育てることで、良い選手も育つ。そして、プロクラブにとって、アカデミーは「投資」の場である意識をより明確化する。その観点に立ち、Jリーグ独自の「育成」が進められていく。
文:サカノワ編集グループ