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疑惑の判定に審判委員会「ハンドではない」と主審支持。日本と海外でルール運用がやや異なる?

横浜FCのイバ。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

横浜FCイバのシュートがDFの右腕で阻止されたが…。難しい「故意」の解釈。

[J2 4節] 横浜FC 1-2 新潟/2019年3月16日/ニッパツ三ツ沢球技場

 横浜FC対アルビレックス新潟の41分、横浜FCのFWイバが放った強烈なシュートがブロックした新潟のDF大武峻の右腕に当たった。しかし井上知大主審は、おそらく腕にボールが当たったことを認めながら、故意ではなかったためノーファウルと判断して、試合をそのまま続行した。

 ハンドであれば、PKが与えられていた場面で、横浜FCの選手たちは猛抗議したものの、もちろん受け入れられなかった。結局、試合は新潟が2-1で勝利を収めた。

 この場面について、日本サッカー協会(JFA)審判委員会トップレフェリーグループマネージャーの扇谷健司氏が、3月19日に更新された「DAZN」の「Jリーグジャッジリプレイ」で、次のように見解を述べた。

「これはハンドではないと思います。確実に手に当たっています。手は意図あるものか、自然なものか。ボールへ右足を出して行っている時に右手が出たもの。また距離も(イバから)1、2メートルしかなく、蹴られたボールをよけることができたかどうか考えなければいけません」

 そのように「故意」のハンドではなかったことを強調。そのうえで扇谷氏は次のように続けた。

「カメラのアングルによって、右手を開いているように見えます。ただ主審のポジションからは、あまり手を開いていたように見えなかったかもしれません。また、スローで何度も再生することで、ハンドではないものもハンドに見えてきてくることもあります。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)でもそうですが、手に当たったところで止められるとそう見えてきます。ノーマル(なスピード)での動きも見ていかないといけないので、ハンドではなくていいのではないかと思います。非常に難しい判断ではあります」

 Jリーグの2019シーズン開幕前、選手・スタッフにも、こうした場面(走っている時の腕にボールが当たるなど)では「ハンドにならない」ということが、競技規則のスタンダードとして映像とともに伝えられている。その視点に立つと、今回の井上主審は規定通りの判断を下したと言える。

 しかし一方、昨年のロシア・ワールドカップ(W杯)の決勝で、フランス代表のブレーズ・マテュイディのヘッドが、クロアチア代表のイバン・ペリシッチの広げた手に当たり、これがVARによってPKが与えられた。その判定が一つの基準になり、ペナルティエリア内で腕を広げて対応した守備者のその手や腕にボールが当たった場合、PKが与えられることがほとんどになった(特にVARを採用している欧州主要リーグで)。今年1月のアジアカップ決勝、日本代表の吉田麻也がハンドの反則をとられたのもそうした傾向の一環と言える。

 そもそも何を持って「故意」と捉えるか、解釈が難しいところである(ペリシッチも、吉田も、明らかに「故意」に手でボールに触れてはいない)。しかし世界的な傾向では、ペナルティエリア内で手を開いている時点で、それにより利益を得ようとしている、と判断される流れれにある。

 サッカーはそもそも「手を使わない」という競技の原則が海外では重視されている。一方、Jリーグは「規則」の運用に厳格で、守備者にやや寛容と言える判定基準になっているようだ。

 ただ、サッカーのルールを統括する国際サッカー評議会(IFAB)は3月12日、欧州の2019-20シーズン開幕に備えて新たなルールをまとめた。そのなかでこうした曖昧さを受けて、ハンドの反則をより明確に規定。肩より上に上がった腕に当たった場合や得点機を阻止する形になった場合は、すべてファウルが取られるということだ。

 これまでの流れでは、日本でも夏以降にその新ルールが採用される運びである。

 とはいえ現状でも、W杯やアジアカップなど国際大会で示されたものと異なる「ハンドの基準」がJリーグで運用されている印象は拭えない。そのために何より観戦している人たちも困惑している感じだ。まだ開幕から間もなく、世界のスタンダードの観点から、審判委員会のみならずJリーグや日本協会を含めた議論も必要かもしれない。

文:サカノワ編集グループ

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