FC東京の新人DF渡辺剛が”後輩”前田大然を封じ込めた舞台裏
FC東京の渡辺剛。写真:上岸卓史/(C)Takasi UEGISHI
東慶悟からは「ビビらず、チャレンジしろ」と声を掛けられ、リーグデビュー戦を無失点勝利で飾る。
[J1 9節] FC東京 2-0 松本/2019年4月28日/味の素スタジアム
今季中央大からFC東京に加入した新人DF渡辺剛が松本山雅FC戦でリーグデビューを果たし、無失点勝利に大きく貢献した。
レギュラーであるチャン・ヒョンスのコンディションを考慮し、長谷川健太監督が急きょ、渡辺を先発に抜擢。22歳のセンターバックは「その期待に絶対に応えたいと思っていて、空回りせず、その期待を自分の力に変えられたことは良かったと思います」と、地に足を付けて戦い切った。
ルヴァンカップのグルプステージ(GS)はこれまで全4試合フル出場中。プロデビュー戦となったGS1節の柏レイソル戦では1-2で敗れたものの初ゴールを決めていた。
一つひとつ結果を残し、そして今回、リーグデビューを果たすことに成功した。
「来たチャンスをしっかり掴めているのは自分の中でも珍しいかなと思います。いつもちょっとミスをしたりすることが多いんですけれど……。プロになって自覚を持って、したたかにやらないといけないと思っていたので、精神的にも成長しているのかなと思います」
東慶悟らからは「ビビらずいけ、チャレンジしろ」と試合前に声を掛けられていたという。
「潰しにいくのは得意で、そこで出られなくなってズルズル下がるのではなく、ファウルになっても構わないぐらいのチャレンジでしっかりボールを取れて流れを変えられば楽な展開になると思ったので、その面では、強気に行けたのはけっこう良かったと思います」
そのように持ち味を出すことで、守備の主導権を握ることもできた。そして松本の最前線に入っていたエース前田大然は山梨学院高校時代の後輩でもある。何度か背後のスペースを突こうと試みていた前田に対し、トップスピードにさせず、アタックを未然に防ぐことに成功した。
その駆け引きの舞台裏を、渡辺は次のように明かした。
「大然と走り合いになったら勝てないと分かっていました。予測をして、ちょっと先に動くように心掛けていました。自分もスピードは武器でもあるので、その部分で先に(ボールを)触れることができて、『予測が大事だ』と思っていたところを出すことができました」
渡辺は東京五輪世代でもある。東京U-15出身でもあり、オリンピック出場は目標だ。その挑戦権は、今回の活躍で間違いなく手に入れた。
「ちょっとずつ結果を残さないと東京五輪は絶対に無理だと思っています。チャンスが来た時にしっかりアピールして、選んでもらえた時にチャンスを掴みたいです」
目の前のチャンスを一つずつコツコツと掴んでいく。184センチと体格にも恵まれた22歳の渡辺が平成の最後に一つ大事なチャンスをしっかり掴んだ。
令和の新時代を迎える。渡辺剛の時代が待っているはずだ。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI