【GKストーリー】大迫敬介と若原智哉。19歳の新世代守護神がかわした熱きエール

浦和戦で無失点勝利を収めた広島のGK大迫敬介。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

「おめでとう」、「智哉ならできるぞ」。日本代表&U-20日本代表――それぞれのステージで。

[J1 13節] 浦和 0-4 広島/2019年5月26日/埼玉スタジアム2〇〇2

 日本代表選出、おめでとう――! 大迫敬介(サンフレッチェ広島)のキリンチャレンジカップでのA代表入りが発表されると、本人のもとにポーランドでU-20ワールドカップ(W杯)の戦いを控えたU-20日本代表の若原智哉(京都サンガ)から連絡が入った。

 二人は1999年生まれの同い年。各年代の日本代表で切磋琢磨し合ってきた間柄だ。

 ただ約半年前、インドネシアで開催されたU-19アジア選手権で、大迫と若原は、一つ年下でありU-17W杯で活躍した谷晃生(ガンバ大阪)にレギュラーポジションを奪われていた。

 谷が重要な3試合でゴールマウスを守ってU-20W杯の出場権獲得に貢献。大迫と若原はターンオーバーで1試合ずつ戦ったのみだった。

 しかし、谷は今年2月、左肩関節前方脱臼を負ってしまう。そこから何とか復帰を遂げてきたものの、4月下旬に再び左肩を脱臼……。U-20W杯には間に合わなかった。

 その間に、大迫は広島でレギュラーポジションを掴み、そして今回キリンチャレンジカップとコパ・アメリカで日本代表入りを果たした。

 一方、若原は昨季J2でリーグ18試合戦ったものの、今季は一度もベンチ入りさえできずにいた。ただ、だからこそ必要とされる場、U-20日本代表での戦いに懸けていた。

 大迫はエクアドル戦を控えた若原と電話で話したという。すると若原から「実はすごく緊張しているよ」と胸のうちを明かされ、「智哉ならできるぞ!」と励ましたそうだ。U-20W杯の舞台に立つ。ある意味、一緒に目指してきた一つの大切な通過点。大迫にとって、他人事ではなかった。

 そしてU-20W杯の日本対エクアドル戦。日本がオウンゴールで失点を喫し混乱をきたしていた51分、ハンドのファウルでPKを与えてしまう。決まれば2点差になる――。

 そのピンチで、若原は左に飛んで、エクアドルのすべてのセットプレーを担っていた10番のジョルダン・レサバラのキックを止める。これまでのGK人生の詰まっていたと言っても過言ではないビッグセーブ。

 それまで自信満々にプレーしていた相手のキーマンは、そのキック失敗により、明らかにリズムを狂わせた。そして日本は息を吹き返し、山田康太が同点ゴールを決め、試合終盤も畳みかけた。

 若原のビッグプレーが悪い流れを断ち、日本に勢いをもたらした。

「あのPKストップは、本当に刺激になりました」

 大迫は自分のことのようにその若原のビッグプレーを喜んだ。

 5月26日。まず大迫がJリーグ13節のピッチに立った。そして浦和レッズを無失点に抑え、チームに4-0の快勝を呼び込んだ。

「(日本代表に選ばれ注目されるなか)いい形で代表活動を迎えたいと思っていたので、そうしたなかで今回無失点に抑えられたことは自信につながります。(アウェーの雰囲気に緊張は?)全然しなかったです。どちらかというと、こうしたアウェーの雰囲気は好きです。後ろに(浦和)サポーターがいることを、むしろ楽しみながらプレーできました」

 性格は温厚で優しそうだが、なかなか神経は図太い。

 そして試合後にはサポーターからの寄せ書きの入った日の丸が贈られ、改めて、日本代表選出の”重み”を感じ取っていた。

「苦しい時も、良い時もサポートしてくれる皆さんに、今日の勝利を届けられて嬉しいです。でも、まだまだです。厳しい戦いが続くので、一緒に戦っていきたい。この勝ちを無駄にせず、次につなげていきたいです」

 そのように広島の新守護神は気持ちを引き締めていた。

 そしてこのあと、日本時間の午後10時30分から、今度はポーランドで、U-20日本代表がU-20メキシコ代表と対戦する。中南米の強豪との楽しみな一戦。日本が勝てば、決勝トーナメント進出に大きく近づく。

 大迫が先に結果を残し、若原につないだ。カテゴリーも、国も異なる。しかし、二人はつながっている。

「(エクアドル戦前に)電話で声を掛け合ったあと、あのPKのセーブは、とても嬉しかったですし、すごく刺激になりました。智哉と今そういう良い関係を築けています」

 大迫は少し誇らしく言った。

 大迫敬介と若原智哉。10代の二人のゴールキーパーが火花を散らし、それぞれを高め合っている。これから、さらに”熱い”季節を迎える。

昨年10月、U-19アジア選手権に臨んだU-19日本代表での(左から)谷晃生、大迫敬介、若原智哉。(C)SAKANOWA

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Posted by 塚越始

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