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【浦和】オリヴィエラ解任の舞台裏。「噂」は耳に入っていた

「闘志なくして栄光なし」。広島戦で掲げられた横断幕。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

まさか事実だったとは……。ACLの北京国安戦の前から燻っていた。

 浦和レッズは5月28日、オズワルド・オリヴェイラ監督との契約を同日付で解除したと発表した。ルイス・アルベルト・シルバヘッドコーチ、アレックスコンディショニングコーディネーターとの契約も解除した。代わって大槻毅氏の監督就任が発表された。昨季の暫定監督を務めて以来の復帰だ。

――・――・――・――

 5月22日のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージ最終節の北京国安戦を控えて、妙な噂が耳に入ってきた。

「負けたら、あるみたいだ」

 は!?

 勝ったら決勝トーナメント進出、負けたら敗退。しかも相手は中国リーグ10連勝で首位を走る難敵だ。ある意味、「決勝戦」のような位置づけとなった記者も鼻息を荒くしている試合を前に、そんな水を差すような話が飛び込んできた。

 つまり――どうやら監督交代の話が進んでいるようだ。しかも、けっこう有力筋からの情報らしい、と。

 どんな筋だ!?

 専門誌時代より練習取材に来る機会が増えたとはいえ、ほぼ毎日や毎週通っている担当記者といえるほどではない。そんな末席の記者に、特に求めているわけでもないそんな情報が漏れてくる。

 もちろん、適当に受け流した。「噂」にすぎないはずだ、と。ネガティブに物事を捉えがちな人も少なくない。ふとした情報が大袈裟になっただけだろう、ぐらいに。

「水曜日、空けておいたほうがいいかもよ」

 え、ちょっとしつこいぞ!

 今思えば、記者失格だろう。信じるにも無理があった。そして火曜日のACLは快勝を収めたが、日曜日の広島戦で大敗。突然ではあったが、あっさりと監督交代が決まった。

 しかし、うんざりだ。馬(私)の耳にしていた念仏は、意味のあるメッセージだった。そういった「噂」が「事実」だったということになる。

 つまり、ある意味、浦和が試合に負けるのを、オリヴェイラ監督が失墜するのを、手ぐすね引いて待っている人が少なからず組織にいたことになる。

 もちろんオリヴェイラ監督もまた、あらゆる高額なトレーニング機材を揃え、多額の移籍金もかけて選手を獲得し、コーチ陣も呼び寄せてきた。そういった独裁的なやり方をしながらも、一向に結果が出ず、もはやクラブとして支持しきれないという状況に陥っていたことが伺える。

 無論、そういったファミリー重視の体制になることなど、指揮官を招聘した時点で分かっていたことだ。または、そんな折り合いもつけられないほどの体制になっている表れだ。

 広島戦で大敗したあとの記者会見、オリヴェイラ監督は「5連敗したあと、5連勝をして、優勝をしたこともある。チームを発展させていく」と強調した。

 うーん、これは川崎戦、大幅なメンバー変更もありうるな。そう思わせた。

 ところが直後、中村修三強化部長がわざわざメディアの前で監督去就について言及するコメントをした。

 私は作業のためその場にいなかったが、メディアルームでそのコメントを知る。なぜ、このタイミングで――。監督を支持する? 本音は辞めさせたいのか? と勘繰りたくなるシチュエーションだった。

 3シーズン連続での監督交代劇。ミハイロ・ペトロヴィッチ氏の時も、堀孝史の時も、冷静になってからレポートをまとめようと思っていた。ただ、そうするうちに「過去は過去。新しいスタート」という機運になり、整理する機会を失ってきた。

 今回は書き綴っていこうと思う。このあとのレポートで、サッカーのスタイル、チーム自体が過渡期であること、そもそもの旧態依然とした体制などについて、少し客観的に、建設的な面も入れたいと考えている。

 まず監督交代が発表された直後、とにかく愕然としている。これまで耳に飛び込んできた「悪い噂」がものの見事につながり合っている。

 監督交代への動きは、水面下で以前からあったということだ。

 オリヴェイラ監督は察知していたのだろうか。無念に違いない。確かにサッカー的に何がしたかったのかは見えないままで、サポーターにも我慢を求め続けてきた。ただ、そのなかで、昨季の天皇杯、そして先週のACLの北京国安戦など、負けたら終わりという試合での勝負強さは凄まじかった。

  ”決戦”を控え「試合を楽しみたいです」と言うような選手はいなくなり、ベクトルを勝利のみに向ける「勝つ集団」と化す。それは記者も含めて。そのスイッチの入れ方は見事だった。ただ、チーム作りやトレーニングにおいて、厳しさのなかの楽しさ、あるいは楽しむなかでの厳しさ、そんな要素もまた必要なのだと感じさせる結果となったが……。

 いずれにせよ、男でも惚れ込む勝負強さだった。そんな人生を懸けた勝負への執念は、近年、浦和が欠いていた要素でもあったと言っていい。その魂の込められたメッセージは、きっと選手たちの胸――そのエンブレムに刻まれたはずだ。

【提言】浦和レッズは一つの産業。「社長」と「CEO」を分離すべき

取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI

Posted by 塚越始

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