【女子W杯】もう一つの「日本代表」が開幕へ準備万端
(左から)坊薗真琴さん、山下良美さん、手代木直美さん、萩尾麻衣子さん。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA
山下主審、手代木、坊薗、萩尾各副審4人の「なでしこ審判団」が登場。女子国際大会初のVARにも対応。
フランス女子ワールドカップ(W杯)開幕を3日後に控え、世界中から選出された審判団のトレーニングがパリ市内で公開された。男子選手のゲームによる実践をはじめ、シュートスパンのダッシュ、テニスボールを使っての反射神経の刺激、個々のフィジカルトレーニングなど約2時間弱のメニューをこなした。
そのなかに、日本から選出された、山下良美主審、手代木直美、坊薗真琴、萩尾麻衣子各副審の姿もあった。
今大会は一部改正された新ルールの採用とともに、女子の世界大会で初となるVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)が導入される。それだけに様々な状況を想定しながら、万全の準備を整えている。「試合中はあまり話さない」と自己分析をしていた山下主審にも少し変化があったようだ。
「自分の決断を声に出すことになるので、VARの中のみならず、4人でより良いコミュニケーションを取れていると思います」(山下主審)。世界中のフレェリー陣が一体となって女子W杯本番に向かっている。まさにW杯。そんな大きな流れを感じ取っていると語ってくれた。
坊薗副審は「やはりフランスという国はサッカーでは憧れの地ですから、そういうところで開催される大会に参加できるのは本当に光栄なことです」、萩尾副審は「男子のワールドカップ優勝国というだけでなく、女子サッカーもポピュラーになっていますし、強いチームが揃っているので、審判としてもやりがいがあります」とそれぞれ語るように、サッカー文化の根付くフランスで得るものは多いようだ。
萩尾副審も感じているように、今大会は一段と実力差が拮抗した大会になると予想される。それだけ各国のレベルが上がってきているということで、審判団としても、一段と試合中は集中が求められ、瞬間的な判断力も問われる。手代木副審も「年々、フィジカルやスピードが上がってきていて男子に近づいてきていると感じます。その分、予測を早くする必要があるんです」と気を引き締める。そのためには各チームの戦術も、ある程度理解しておくことも重要なのだという。ふとした時にレフェリーの動きを観察してみると、そこから次のプレーを読み説く楽しみが見つかるかもしれない。
もちろん主役は選手たち。一方、世界中の審判団たちも厳しいトレーニングを経て、各試合の割り当てが決められていることも頭の片隅に入れておきたい。迷いなく整然としたレフェリングができれば、審判にとっても狭き門でもある決勝トーナメント以降のより重要な試合のアテンドを任される。なでしこ審判団――ワールドカップを支えるもう一つの“日本代表”にも大いなるエールを送ろう。
取材・文:早草紀子
text by Noriko HAYAKUSA