【U-20W杯総括】「久保建英不在」を反骨心に戦ったU-20日本代表。だからこそ韓国には勝たなければいけなかった
U-20日本代表 ※グループステージ初戦のエクアドル戦より(C)FIFA via Getty Images.
誰一人”主力不在”を言い訳にせずGSを無敗で突破を果たしただけに…。
U-20日本代表の挑戦はU-20ワールドカップ(W杯)での「ベスト16」で終わりを告げた。0−1で敗れた韓国戦後、応援に駆け付けたサポーターたちのもとへ向かう選手たちの中には、涙を見せる者もいれば、気丈に振る舞う者もいた。
それぞれ異なる表情を浮かべていたが、簡単に酌み取ることのできない悔しさを心の中に抱えていたことは想像に難くない。
チーム発足から2年、待っていたのは、あまりに残酷な結末だった。
日本は前回2017年大会に続き16強の壁を破れなかった。ただ“影山ジャパン“が開幕前に難しい局面を迎えていた。
久保建英(FC東京)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、安部裕葵(鹿島アントラーズ)が日本代表のメンバーに選出され、最終ラインの中軸を担っていた橋岡大樹(浦和レッズ)、GK谷晃生(ガンバ大阪)が負傷により間に合わなかった。昨秋のインドネシアU-19アジア選手権で主力を務めた5人が選外となり、チームは編成の見直しを迫られたからだ。
そうした状況下でも選手は誰一人として“主力不在”を言い訳にしなかった。むしろ、一人ひとりが自立し、チームの一体感を増幅させる出来事になったように思える。
今年に入って久保らを招集できていなかったものの、基本的には彼らを組み込む想定でチーム作りを進めてきた。しかも、彼らはJリーグで出場機会を得ていた選手たち。逆にその他のメンバーでコンスタントに出番をつかんでいたのは、齊藤未月、鈴木冬一(ともに湘南)、三國ケネディエブス(福岡)など数名しかいない。必然的に戦力がダウンしたと受け止められた。
そういった声は選手たちの耳にも届いていた。菅原由勢(名古屋グランパス)も韓国戦後に本音を漏らした。
「正直、大会前、自分たちのサッカーはどうなのかと考えた。その時に主力が抜けたことの不安が色々なところから聞こえてきて、僕たちの中にも多少不安はありました。そういうプレッシャーと戦ってきました」
だが、選手たちは決して彼らの不在を言い訳にしなかった。このチームでいかに戦うのかを真剣に考えていた。
宮代大聖(川崎フロンターレ)も韓国戦後、「選手、スタッフを含め、このメンバー全員で戦う想いでやって来たので、誰一人として、彼らがいないからどうこう、という考えではやっていなかった」と語っていた。
他の選手も同様で、彼らの不在を嘆く言動を見せる者は皆無。グループステージを無敗で突破したのも、自分たちにしっかり矢印を向けていたからである。
「様々なことがありながらも、チームとしてさらに強くなり、個としても戦っていく。組織力は日本のパワーだと大会中も言ってきました。個人でもっともっと仕掛けて、ボールを奪うことはすごく大事にしてきたつもりです。そういう意味では彼らが世界で自分が戦うイメージをして、やってきてくれたと思います」
影山雅永監督はそのように選手たちを手放しで称えた。
だからこそ、忘れてならないのはベスト16に勝ち進んで臨んだ韓国戦の敗北だ。アジアのライバルとは、否が応でも比較される。
ましてや今回の韓国はイ・ガンイン(バレンシア)をはじめ、海外組を4名招集するなど、日本と対照的なベストと言える陣容で挑んできた。
ここまで勝ち上がったのは紛れもなく彼らの力。ただ、大舞台の日韓戦で勝利を掴めなかった以上、結果、久保らの不在が響いたという声が上がるのもまた必然だ。だからこそ、日本は韓国に勝つ必要があった。
「結果が出てしまえば、最善の準備をしていたつもりでも、それが最善じゃなかったということになる」
菅原は唇を噛み締めた。
選手たちも敗戦の意味を理解している。限られた時間でチームとしての成長を示した点は評価されて然るべきだが、どんなに良い準備をしても、目を背けずに言い訳をしなかったとしても、結果に勝るものはない。彼らにとって、勝負の厳しさを知る大会となった。
取材・文:松尾祐希(フリーライター)