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【U-20W杯】得点に加えて山田康太が成長を示した2つのシーン

U-20日本代表の山田康太。(C)Photo by Marc Atkins - FIFA/FIFA via Getty Images

影山監督から先発を告げられたのは試合2日前。「正直、気持ちが昂ぶった」。

[ポーランドU-20W杯 GS1節] 日本 1-1 エクアドル/2019年5月23日/ビドゴシチ

 濃厚な90分だった。

 ポーランドU-20ワールドカップ(W杯)のグループステージ初戦、U-20日本代表は南米王者のU-20エクアドル代表に対し、序盤の劣勢を乗り越えて1−1の引き分けに持ち込んだ。そのチームを救うゴールをねじ込んだのが、MF山田康太だった。

 1点リードされて迎えた68分。相手の運動量が落ちてきて、交代出場した宮代大聖や西川潤が前線でアクセントをつけて、日本が押し込んでいた時間帯だった。

 懸命に足を伸ばした伊藤洋輝のロブパスに宮代大聖が詰めて相手GKと接触。そのこぼれ球が、ゴール前に浮く。するとそこに飛び込んだ山田が右ボレーで合わせる。基本通りといえる叩きつけるキックでネットに蹴り込み、これが値千金の同点弾となった。

「なんであそこにいたのかは分からないですけれど……。前に行って自分のところに転がってきて、かなり高く集中して、ミートすることを意識しました。本当にあんまり覚えていなくて、気持ちで押し込みました。ゴールに入ったことだけ覚えています」 

 山田はそのように無我夢中であったことを明かした。

 影山雅永監督から先発起用を伝えられたのはエクアドル戦の2日前だった。「正直、すごい気持ちが昂りました。本当に興奮を抑えられないくらいで迎えました」と、高いモチベーションで試合に臨んだ。

 4-4-2の左サイドハーフでスタメン出場し、指揮官の起用に応える働きを見せた。横浜FMユース時代から培ってきた質の高い技術に加え、献身的といえる懸命のプレスバックでチームに貢献。得点シーンも泥臭くゴール前に走り込み、ゴールを陥れる確率の高いキックを自然と選んだ。

 この90分間、そんな成長を示すのに十分なパフォーマンスだった。

 得点シーン以外に、印象に残ったシーンがふたつある。それは、失点のオウンゴールにつながってしまったもののイエローカード覚悟でカウンターを阻止した前半終了間際と、日本のGK若原智哉がPKを止めた51分だ。

「左サイドバックの東(俊希)が球際に行って入れ替わってしまいました。カウンター気味に行かれて、追いつけそうだったんですけど、ここで確実に止めないと危ないと」

 そのように判断し、43分にイエローカードをもらったものの、エクアドルのサイドアタックを食い止めた。そのFKからオウンゴールが決まってしまったが、時間帯などを考えると、山田の判断は決して間違っていなかったのではないだろうか。

 さらに51分、エクアドルのあらゆるセットプレーのキッカーを務める10番のレザバラのPKを、GK若原が左にジャンプして完璧にセーブする。すると一目散にボールに駆け寄って大きくクリアしたのが山田だった。この場面でも読みの速さと危機察知能力が光った。

 以前にも増して、山田はハードワークや身体を張った守備の粘り強さが増した。しかも、このエクアドル戦では、そのタフさをゴールに結びつけてみせた。

 ゴールのみならず、その献身性は成長の証だ。その献身ぶりが、日本のファーストゴールをもたらしたと言っても過言ではない。横浜の下部組織から育てられれてきたプロ2年目(高校3年時に2種登録)の19歳は日の丸を背負って戦いながら、もっと逞しさを増そうとしている。

取材・文・松尾祐希(フリーライター)

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