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【横浜FC新加入会見】中村俊輔のルーツ「三ッ沢」「横浜」「マリノス」への想い

横浜FCに加入した中村俊輔。(C)SAKANOWA

「僕はジュビロに助けられたし、今回もそうです。その恩をプレーで返したい」

 横浜FCの中村俊輔(←ジュビロ磐田)と皆川佑介(←サンフレッチェ広島)の新加入記者会見が7月16日、ニッパツ三ツ沢球技場で行われた。そのなかで中村が「三ッ沢」「横浜」、そして「横浜F・マリノス」という稀代のレフティを生んだ”ルーツ”につながる3つのキーワードへの想いを語った。

 まず、「子どもの頃からプレーしてきた『三ッ沢』をホームにして戦うこと」について問われた中村は「素晴らしい質問ですね」と小さく笑い、次のように続けた。

「僕は小さい頃からここへ親父に連れて来てもらって、(日本リーグ時代の)日産自動車対読売クラブとか、古河電工(所属していた奥寺康彦さんを見る)の試合を観戦して、それからマリノスに加入し、プロ初ゴールもここで決めました。思い出がいっぱいある世界一のスタジアムであり、グラウンド。ここをホームにできることを幸せに感じます。ただ、試合に出るだけではなく、いいプレーをしないと意味がないので、頑張ります」

 そのように、自身の思い出と汗の詰まったスタジアムでありピッチを”ホーム”にして戦えることを率直に喜んでいた。

 また、横浜FCへの加入が決定したあと、Jリーグ最年長52歳のキング・カズこと三浦知良にメールで「よろしくお願いします」とあいさつしたという。するとカズからも「こちらこそ」というメッセージをもらったそうだ。

 ただ、シーズン途中に加入することの難しさは感じているという。そこは百戦錬磨の中村であっても、未知な領域である、と。

「シーズン途中から入る難しさはあると感じていて、これまでエスパニョールからマリノスに復帰した1回しか経験していません。チームがある程度できあがった状態のなかに入り、何かを変えようとして、変えたのはいいけれど勝点を積み上げられなければ意味がない。そこらへんは”空気”を読んでプレーすることも大事かなと思います。

 自分のプレーがこうだよと、(アピール)しすぎてもいけないし、それを含めて、プロの仕事であり力量だと思っています。あとは、奥寺さんがおっしゃったように、若い選手にアドバイスと言いますか、そういったことをピッチ内外でできれば。ただ、あまり言いすぎてもいけないし、良い選手は言わなくても伸びていく。一番は背中を見て伸びていく、そっちを意識したいです」

 また、中村は「横浜」の街への想いとして、「自分が育った街ですし、特にこの三ッ沢は思い出深いものがあります。ここに決まってから、試合を見に行くね、とか練習に行くわ、と知り合いがメールをくれて、そういった意味で、ジュビロから一度『戻ってきた』という感覚はあります」と語った。

 この質問には皆川も「横浜には3つクラブがあり、横浜FCも集客数を含めて結果がすべてだと思っています。スタジアムに足を運んでもらえるように、それにサッカーのみならず横浜の街全体に貢献したいです」と、盛り上げ役を買いたいと意欲を示した。

 そして、中村には、「差し支えなければ、長年プレーしてきた横浜F・マリノスへの想いを聞かせてほしい。同じ街を本拠地にするライバルチームに移籍することに悩みとか葛藤はなかったのか?」という質問が出た。すると41歳のレフティは「差し支えあります」と苦笑いを浮かべたあと、「いや、冗談です」と今度は真面目に語った。

「それはもちろん。頭にはありました。ひとつのクラブでサッカー人生をまっとうして綺麗に終えられる人もいれば、そうじゃない人もいる。僕はジュビロに助けられたし、今回もそうです。その恩を返したい気持ちでプレーして、突き進むだけです」

 古巣である横浜FMとの向き合い方は――これから探っていくというべきか、どうなっていくかは中村自身もまだ分からないという感じだ。何よりもまずは横浜FCのために全力を注ぐ。そのことしか、プロで初となる背番号46を身にまとう中村は考えていない。

 永遠のサッカー小僧が原点の三ツ沢のピッチに立つ。自身初のJ2のステージ、中村俊輔が横浜FCのために全力で戦う。

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[取材・文:塚越始]
text by Hajime TSUKAKOSHI

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