【清水×札幌】幻のレッドカード「審判は反則をした選手が分からなかった」
札幌の鈴木武蔵。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
鈴木武蔵のシミュレーションは取り消し、本来であればヘナト・アウグストが一発退場だったが――。
[J1 23節] 清水 0-8 札幌/2019年8月17日/IAIスタジアム日本平
北海道コンサドーレ札幌が清水エスパルスに8-0の勝利を収めた一戦での81分、いくつか疑問の残る判定が続いた。この場面がDAZNの「Jリーグジャッジリプレイ」で取り上げられ、日本サッカー協会(JFA)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャーが詳しく解説をした。
札幌が6-0とリードして迎えた81分、スルーパスに抜け出した鈴木武蔵がゴール正面、ちょうどペナルティエリアに差し掛かったあたりで、清水のDFヘナト・アウグストの伸ばした肘を背中に受けて転倒する形になる。
笛を吹いた今村義朗主審だったが、まずシミュレーション(わざと転倒した)だったとして鈴木にイエローカードを提示した。
ただ、そのあと副審と協議した結果、今村主審は鈴木がファウルを受けていたという情報を聞き、鈴木のシミュレーションを撤回する。
しかし、PKを与えるべきだったようだが、ペナルティエリア外からの直接フリーキックが与えられた(ポイントもずれていたが、結果的に福森晃斗が直接決めて7-0にする)。
また、清水側のファウルだったのであれば、ヘナト・アウグストがドグソ(決定機阻止)にあたり退場処分の対象になるべきだが、カードは一切出なかった。
上川氏は一つずつ説明し、見解を示した。
「まず主審はコンタクトがなかったと判断し、鈴木武蔵選手のシミュレーションを取りました。ただ、副審から見ると、明らかに手が掛かっているのが見えていて、その情報を主審に伝えました。そこで協議した結果、『(鈴木の)背中に手をかけている』ということで主審は判断を変えました。(鈴木に対する)シミュレーションのイエローカードは、その時点で取り消されています」
VTRで確認すると鈴木はペナルティエリア内ファウルを受けているようだが……、なぜPKにならなかったのか。
「PKを与えるべきか、ペナルティエリアの外だったか。最後は他の複数の選手と重なっていて見えず、副審からは『ペナルティエリア内だ』という確信が持てませんでした。確信がなければ、PKは与えられません。副審の持っている情報からだと、ペナルティエリアの外で反則が起きていると、主審に伝えたからでした」
では、鈴木を押したヘナト・アウグストが、警告や退場の対象にならなかった理由は?
「ペナルティエリアの中であっても、外であっても、今回のケースはドグソ(決定機阻止)に該当します。三重罰(退場、PK、次節出場停止)に値するものでした。ただ、映像ではエスパルスの22番の選手が反則をしていると分かりますが、最終的に誰が反則をしたのか、審判員のなかで確認を取れませんでした。そのため、ドグソの状況であったにもかかわらず、カードを出せませんでした。第二副審や第四の審判もそこまでプレーを戻して、確認しきれませんでした」
非常に珍しいケースと言える。
つまり、レッドカードを出す対象の選手が分からなかった。審判員が確信を持てないので警告や退場が”見逃された”という状況が起きたという。
そして上川氏は「もう少し角度をつけるポジションを取れていればファウルを把握し、背番号の確認もできていたはずです」と、主審のポジショニングについて指摘していた。
このほか、この試合の24分に札幌の2点目のゴールを決めたジェイが、清水サポーターからの大ブーイングを受けて、耳に手をやるパフォーマンスをしたシーンも取り上げられた。上川氏は「(警告の対象ではないか? という指摘に)褒められた行為ではありません。ただ主審から注意を受けたあと行為を繰り返すこともなく、主審のマネジメントは良かったと思います」と説明していた。
24節の8月24日、札幌はホームでFC東京(札幌ドーム/1時開始)、清水はアウェーで川崎フロンターレ(等々力/19時開始)と対戦する。
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[文:サカノワ編集グループ]