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【鹿島×浦和】初導入『VARの声』公開!杉本へのブエノのタックルは主審「ない、ない、ない。取らない」

VARの「オン・フィールド・レビュー」の際に使われるモニター。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

原副理事長「自分も杉本のようなタイプ。正直、あそこでは倒れない」

 Jリーグの公式戦として初めて、ルヴァンカップ準々決勝からVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が試験導入された。それに伴い9月16日、「Jリーグジャッジリプレイ」特別編が、Jリーグのユーチューブ公式チャンネルで公開され、準々決勝8試合のなかで起きた事象について、日本サッカー協会(JFA)の審判委員会トップレフェリーグループマネージャー扇谷健司氏が解説をした。また、Jリーグの原博実副理事長、タレントの平畠啓史氏がゲスト(コメンテーター)を務めた。

 まず、VARが加入するケースについて、改めて確認しておきたい。

1)得点にかかわるケース
2)PKにかかわるケース
3)一発退場かどうか
4)人違い(警告・退場)

 上記4つの重大な事象のうち、ピッチ上の審判員が確認できない、あるいは判定できなかった場合のみ、VARは介入する(もちろん、別室でVARとAVAR[アシスタント・ビデオ・アシスタント・レフェリー]全てのプレーをチェックするなかで)。

 冒頭、扇谷氏は改めて、次のように強調した。

「明白な間違いのみにしか介入できない。例えばPKの判定は、主審の意見も分かれる時があります。そこで、すべてに関わるわけではありません。誰の目にも明白なもの、あるいは主審が確認できなかったプレーにVARが介入する形になってきます」

 例えば、誤ってゴールキックではなくコーナーキックに判定され、そのコーナーキックからゴールが決まっても、これはVARの対象外。ゴールは取り消されない。

 また、オフサイドあるいはゴールラインを割ったかどうかという誰の目にも明らかな『事実』に関する事象は「VARオンリーレビュー」によって、主審とVARの交信のみで判定が下される。

 一方、ビデオ確認が必要な場合、ピッチ脇のビデオを主審でチェックする「オン・フィールド・レビュー」が採用される。

 そして今回、9月8日のルヴァンカップ準々決勝・第2戦の鹿島アントラーズ対浦和レッズ戦(スコアは2-2、2試合トータル5-4で鹿島がベスト4進出)のアディショナルタイム、杉本健勇がペナルティエリア内にドリブルで仕掛けた際、ブエノがやや後方からチャージ。杉本は倒れたが、佐藤隆治主審は「ノーファウル」と判定した。

 その際の佐藤主審とVARのやりとりが公開された。

 内容は以下の通り。

※ペナルティエリア内の杉本にパスが渡る。

VAR「ポッシブル・オフサイド!(オフサイドの可能性)」

佐藤主審「ゴーゴーゴー!」

※ここで杉本とブエノが接触

VAR「お、ポッシブル・ペナルティ!!(ファウルの可能性)」

佐藤主審「ない、ない、ない。取らない!」

VAR「いやー」

佐藤主審「コンタクトあるけど、白(浦和)が自分からイニシエイト(きっかけを作ること)をやっている」

VAR「なるほど」

佐藤主審「自分からディフェンスのコースに体を入れている」

VAR「OK」

 この時点で、主審の判定が尊重され、試合もそのまま続けられたのだ。

 扇谷氏は次のように説明を補足した。

「まず主審がどのように判断したかをVARに伝えます。白(浦和)の選手が自分から体をぶつけてきている、と。その接触によって倒れた、と伝えています。VARはそれを聞いて、映像を見たこととの違いや食い違いがないかを擦り合わせていきました」

  ここで微妙なのが、”明らか”、”明白”とは、10人中9人(9割)が「間違い」と思うような判定の場合とのこと。6、7人が「間違い」と思うようでは、VARは介入しない。

 つまり、今回この場面を「PK」と判定する主審がいてもおかしくはなかったと言うこと。なぜならば、それも”明白”ではないから。そこはまた今後、議論を呼ぶことになりそうだ。

  PKかどうかという主審の”主観”が関わるケースでは、今回のように、主審の判断が尊重されるケースが多くなるということだ。

 また、原副理事長は、この杉本のプレーについて、次のように自身の考えを語った。

「自分も杉本と似たようなタイプの選手だった。あそこで相手をブロックするため、通常より50センチぐらい前へ体を入れて、相手をブロックしようとする。そこで倒されて、PKだという人もいると思う。ただ、半分ぐらいの人は、(杉本が)自分から行っていると言うとも思う」

「メッシやクリスチアーノ・ロナウドは、そうしないで先にキューンと行っちゃう。ただ、体を張りブロックに行くタイプは、ここでこそ倒れてはいけない。自分はこうした(杉本)タイプだったけれど、正直言って、倒れない。そこで倒れてしまうと、(今回のように)『ファウルをもらいに行っている』と思われてしまいがちだから。そう考えると、今回はVARが介入しないでいいと思う、明らかな間違いではないから」

 まさに、微妙な判定だったことが分かる。浦和サイドから見れば、ブエノが後方からボールに行っても届かず、杉本を倒したとも受け止められるが……。いずれにせよ、VARが介入したからと言って、どちらかが納得しないケースもあるということだ。

 ルヴァンカップを勝ち上がったチームは、ここからリーグ戦とカップ戦の”ダブルスタンダード”にいかに対応するかも、重要なポイントになってくる。

[文:サカノワ編集グループ]

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