曺監督のパワハラ報告書。選手から生々しい「死んだ方が楽」「一緒にやるのは無理」などの声

湘南ベルマーレの選手たち。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

一方で、「あそこまで選手と向き合ってくれる監督はいない」など熱意を肯定する意見も。

 公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が10月4日、湘南ベルマーレの曺貴裁監督のパワーハラスメント(パワハラ)疑惑に関する「湘南ベルマーレに関する通報などにかかる調査報告書(要約・公表版)」を発表した。関係者約60人からの調査を踏まえ、選手・スタッフ、それぞれへの曺監督の問題となった言動がまとめられ、パワハラがあったと認定した。曺監督自身はそういった発言をしたとは認めていない、あるいはニュアンスが異なると語っている。ただし、調査チームは関係者の供述の具体性、複数の証言などから公表に踏み切った。

 そのなかで、選手に対する言動について、非常に生々しい内容が報告されている。

 2019年6月の試合では、ボールを奪われたあとの切り替えが遅いと感じた選手に対し、曺監督が机を蹴り、サッカー雑誌を当該選手に投げ付けた。雑誌は選手の顔の横を通過して、壁に当たったという。

 また、これまでに以下のような発言が選手にあったという報告が上がった。

「お前は嘘つきだ」

「(期待を)裏切るのか。これからの人生どうするよ。ヤバイよ」

「お前の代わりはいくらでもいる」

「〇〇(他クラブ)に返すぞ」

「サッカーやめちまえ」

「選手やめた方がいい」

 こうした言動の多くは、他の選手やスタッフもいるロッカールーム、練習場、スタッフルームなどで行われていた。

 そういったなか、一方、選手からは曺監督の愛情や熱意への感謝や歓迎など、肯定的な声もあった。

「あそこまで選手と向き合ってくれる監督はいない」

「曺さんのおかげで選手として成長できた」

「曺さんには愛情以外感じない」

「素晴らしい人だと思う。自分が出会った監督の中で間違いなくナンバーワンだと思う」

 しかし、次のような声も挙がったという。

「精神的な苦痛を無茶苦茶受けてきた」

「いろんなことが起きて、疲れて、正直もういっぱいいっぱい」

「最初のうちは家に帰って心臓が痛くなったり、死んだ方が楽だと思うことすらあった(しかし後半になると叱られる自分は成長すると感じられるようになった)」

「俺はこのチームに長くいられないと思った」

「ベルマーレというチームは好きだが曺監督と一緒にやることはもう無理」

「(曺)監督はそういうことを言う(人だ)と認識しているが、ショックはショック。行き過ぎた言葉だと思う」

「言っていいことと悪いことがある」

「怖かった」

 報告書には以下のようにも記される。

「指揮官の言動や振る舞いを主たる原因として、泣き出してしまったり、精神的な苦痛を感じて徐々に追い込まれてしまったりする選手も少なくなかった。練習や試合に臨む際、吐き気をもよおしたり、監督を見たりクラブハウスに近づいたりすると、動悸が激しくなったり冷や汗をかいたりするなど、『オーバートレーニング症候群』と医師に診断された選手、夜眠れなくなった選手が複数いた」

 また、この調査チームのヒアリング作業中、曺監督の自身や周囲に対する言動について語る際、泣き出したり、涙ぐんだりする選手が複数いたそうだ。

 さらに曺監督はクラブハウスやロッカールームなどで感情を露にして、扇風機・クーラーボックス・バケツ・バランスボールを蹴る、スパイクを蹴る、ペットボトルを床に叩きつける、などの行為もあった。

 また、メディカルスタッフが選手のケガが完治しておらず、復帰するには早いと進言した際、「大げさだろ。やらせろ」と復帰させることが少なくなかったという。一方、ケガを再発した際には、そのメディカルスタッフに厳しい言動をしたこともあった。

 厚生労働省による「パワハラ」の指標として、ざっくり言うと、仕事上に直接かかわる厳しい言動は判定が曖昧で難しいものの、人格や人間性を否定すること(職務と直接関係ない)、さらに物理的なことが伴う場合(暴力はもちろん、物を投げる、蹴るなど)は間違いなく認定されるケースになる。

 ただし、(プロ)サッカーの場合には「物理的に距離が離れていて、大きな声を出す必要がある。またハーフタイムの15分など時間が限られたなかでチームの方向性を徹底しなければならず、短い言葉で伝えるため、そこで厳しい言葉が出ることは致し方ないとも思う」と村井チェアマンは見解を示した。Jリーグで今後ガイドライン的なものを作成するとも説明した。

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[取材・文:塚越 始]

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