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運命のレアル戦直前、久保建英は数分間の出場。されど18歳、森保監督は一体何を求めたのか?

久保建英。写真:徳原隆元/(C)Takamoto TOKUHARA

10月シリーズ、コンディションに問題?今与えるべき試練だったのだろうか。

[カタールW杯 アジア2次予選3節] タジキスタン 0–3 日本/2019年10月15日/パミール・スタジアム(ドゥシャンベ)

 カタールワールドカップ(W杯)アジア2次予選、日本代表がタジキスタン代表に3-0の勝利を収めた。日本は3連勝、11得点・無失点でグループFの首位をキープした。

 この試合、注目の久保建英は87分、2ゴールを決めていた南野拓実と代わってピッチに立ち、トップ下や右サイドにポジションを取ってアディショナルタイムを含めて約6分間プレーした。永井謙佑からのつながればビッグチャンスというパスがずれ、さらにゴールラインぎりぎりからマイナスのパスを供給して浅野拓磨の決定機を作ったが、シュートはクロスバーに当たって決まらず……。そのDF3人を一網打尽に縦に抜き去ったドリブルは光ったが、結局、国際Aマッチ7試合目もゴールに絡めなかった。

 モンゴル代表戦(〇6-0)との10月シリーズは、結果、この「6分間」の出場のみに終わった。

 久保はこのあとRCDマジョルカに合流し、10月19日にホームでのレアル・マドリード戦に臨む。マジョルカではまだ地位を確立できずにいる18歳のアタッカーは、その大一番で起用されるためにも、日本代表で何かしらインパクトを残したかった。

 結果的に、森保一監督は一体、久保に何を期待していたのだろうか。サイドアタッカーは豊富であり、チーム内の競争を煽った、という見方もできる。

 もちろん、プロである以上年齢は関係ない。ただし、それはピッチ内の話。久保の心身はまだ18歳である。そこは十分に配慮すべき点だ。代表とマジョルカを行き来し、両方のチームで、孤立しつつある現状をどれだけ認識しているのかが、より分からなくなった。

 今季のFC東京でグングン突き抜けて行っている彼に、さらに追い風に乗らせるようと、森保監督はこれまで日本代表でも久保を起用してきた。そのスタンスを貫くのであれば、今回の招集も意味があったはず。一発かましてこい! とそれなりの時間、ピッチに送り込まれることを、誰もが期待していた。

 ところが、このタイミングで、いきなり「勢いに乗ること」にもブレーキが踏まれた。コンディションに何かしら問題があったのだろうか(仮にそうであったとすれば、それはそれで招集したことに問題があるが)。アジア2次予選のまだ序盤戦、ただでさえマジョルカが調子が上がらずにいるなか、追い討ちをかけるように、日本代表でも不安をさらに駆り立てるような「試練」を与えるべきだったのか。悪循環を、さらに加速させただけになってしまう。

 心理面への影響は相当である。むしろ、今回の代表シリーズに招集したのであれば、不安の増長こそ避けるべき事象だったはずだ。今、久保を何より混乱させるのは「理不尽」なこと。与えるべきは翼(ポジションを含め)であり、重責(重石)べきではない。

 いずれにせよ、こうした起用法になるのであれば、久保はスペインに残って、自身の保有権を持つレアル・マドリーとの”人生の一戦”に懸けるべきだった、という意見が出るのは至極当然である。チームに残っていながら先発で出られない、最悪、出場機会が得られなかった、という状況だったとしても、本人はその現実こそ受け止めようとしたはずだ。

 タジキスタン戦、3-0でリードした87分――。あまりに遅い時間での投入、そして堂安とかぶるポジション。そこも良い言い方をすれば「自由」「ファジー」に相互に入れ替わっていたとも見えるが、悪い言い方をすれば「適当」。攻撃のユニットについて、チーム内で整理できていたようには見えなかった。

 チーム内に、もちろん競争がある。ただ、果たして、この段階のこのレベル(タジキスタンはしっかりバトルしてきていたが、後半途中から急激にインテンシティが落ちることは過去2戦でも明白だった)の相手に、正当な評価ができるようにもあまり思えない。

 無論、久保がこれまでの間にゴールを決めていれば、こうした話や議論もまた方向性が変わっていたに違いない。ただ、やはりこうして18歳になったばかりの超新星を招集してきたのだ。森保監督は腹を割って、初ゴールを奪うまでとことん付き合うべきであると言える。そうしないと、次なるステップに踏み出させてあげられないのだから。

 このいろいろなモヤモヤを吹き飛ばすためには――。久保がレアル・マドリード戦で一発、決めるしかない。果たして、今一度、闘志を奮い立たせることができるか。

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[文:サカノワ編集グループ]

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