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【高校選手権】東久留米の主将、下田が開始早々に負傷交代「悪夢のような集大成の5分間。でも最高の3年間でした」

GKの野崎稜凱におぶられて、スタンドへのあいさつに向かう東久留米のキャプテン下田将太郎。写真:上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

前半3失点、後半立て直して――一時、1点差に詰め寄ったが。

[高校選手権 1回戦] 草津東 4 – 2 東久留米 /2019年12月31日/味の素フィールド西が丘

 全国高校サッカー選手権1回戦、東久留米のキャプテンであり守備の要である下田将太郎が草津東戦の開始早々に足首を傷め、交代を余儀なくされるアクシデントに見舞われた。すると草津東の巧みなプレーと超満員5,823人に包まれた特別な雰囲気にも呑まれ、東久留米は前半だけで3失点を喫する。ただハーフタイムを挟み、下田の思いを汲んだ選手たちが発奮、一時1点差まで詰め寄ってみせた。結局最後に1点を決められて敗れたが、東久留米の心を揺さぶるようなサッカーで、後半は大観衆を魅了した。

 決して望んだ形ではなかった。しかし、そんな西が丘の中心にいたのは、ある意味、下田だった。

 開始早々、渡邉颯太のシュートをスライディングで止めに行ったが、右足を負傷。立ち上がれなくなってしまう。行けるはずだ、と立ち上がったものの「痛みがひかず、足首がまったく動かなかった」。悔しいが受け入れるしかない……記録上は8分、鈴木亜藍との交代を余儀なくされた。

 チームは前半だけで3失点を喫す。ハーフタイムには冷静さを取り戻すようにと、チームメイトを鼓舞した。そして松山翔哉、柳田晃陽のゴールで1点差に――。ホームと言える雰囲気の後押しを味方につけて、残り15分、このまま追いつけるのではないかという空気を作り出した。

 しかし――試合終了間際の80分、逆に草津東の10番、小酒井新大に決められて万事休す。どちらが決めるか、という打ち合いのなか、トドメをさされた。

 下田は自身の負傷について「悪夢ような、5分間。これが集大成になるだなんて」と、やはり大きなショックを受けた。一方、「チームも成長をしてきた。この試合でもいつも以上のプレーを見せてくれた」と、東久留米の底力であり、スタンドを含めた総合力を見せられたこと。それを何よりも喜んでいた。ずっと空中戦の競り合いの練習をともにしてきた鈴木との交代もまた、この日のドラマを生んだ要因の一つにもなった。

「もう、このあと試合がないのは悔しいけれど、いい試合の終わり方をできたと思っています。(スタンドへあいさつに行った時)全員のお陰でここまで来ることができた。最高の3年間でした。負けて悔しかったし、涙が出てきてしまいました」

 下田は卒業後、日体大に進学する。高校生活最後の試合は5分間の出場で終わった。しかし、「ここまでの過程こそが大事で、さらにここからがもっと大切。しっかりケガを治して、またこうした大きな舞台に立てるように練習するだけです」と、次なるステージへ目を向けていた。

上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI
上岸卓史/(C)Takashi UEGISHI

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[取材・文:塚越始]

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