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なでしこMVP&得点王。田中美南が明かす移籍を決めた真の理由「INACで5年連続得点王を獲るほうがワクワクした」

田中が求めたINACの「パワー」を生かし、伸ばせる環境。

 本気のオファー、サッカーに集中できる環境……そして惹かれたのがINACのプレースタイルだった。

「パワーや勢いが一つになるとINACはベレーザよりも強いと感じていました。ロングボールやクロスの精度も高いし、パワーもある。最終ラインの裏のスペースへの要求も、範囲が広くなるので自分のプレーエリアが広がると思いました」

 まさに田中が今、求めるシチュエーションが揃っているのがINACだったと言う。

 テクニックを集約したベレーザの絢爛なスタイルに対し、INACはパスをつなぎながら強引な力技も加える。田中の“パワー”も生かせるし、伸ばせる。

 世界と戦えるストライカーとして頂点を目指す田中は、「個」の勝負に託される部分も大きく、かつ日本一の先を見据える新天地を選んだ。

 加えて、もう一点。田中はなでしこジャパンにも数多く選ばれるベレーザの選手たちとは、すでに阿吽の呼吸でプレーできる。一方、INACには鮫島彩、中島依美、杉田妃和、そして現在なでしこジャパンの攻撃のキーマンである岩渕真奈がいる。ここで田中がハマれば、どのタイプに合わせられる、なでしこ内で唯一無二の存在になれるかもしれない。

E-1東アジア選手権の台湾戦でゴールを決めた田中が中島依美とハイタッチをかわす。新シーズンはINACでチームメイトに。写真:早草紀子/(C)Noriko HAYAKUSA

 東京五輪のメンバー決定まで、あと半年ほど。時間は限られるが、田中はINACでの成長に懸けた。

 その覚悟の強さは、ベレーザで背負った背番号「9」をINACで求めたことでも十分にうかがえる。増矢理花がつけていたこの番号を、本人と話し合って譲り受けた。

「逃げず9番を背負って戦い、結果を出すことに意味があるし、その責任を負いたいと思いました」

 田中はまさに退路を断って2020年の戦いに挑む。想像できない自分自身に辿り着けるのか。

「どう転んでも後悔のないように頑張りたい。まさに『NEW CHALLENGE』。INACの今シーズンのスローガン通りです」

 そう笑った田中に揺るぎない確かな自信が感じられた。

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[取材・文:早草紀子]

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