【鳥栖】J1デビュー森下龍矢は悔しさを通り越して「目から血が出そう」
川崎戦後、顔を真っ赤に悔しさを露にした鳥栖の森下龍矢。(C)SAKANOWA
明治大から加入。川崎を無失点に抑えたものの、顔を真っ赤に「自分の無力さに気付いた」。
[J1 1節] 川崎 0-0 鳥栖/2020年2月22日/等々力陸上競技場
顔を真っ赤にして、眼光は鋭いまま。川崎フロンターレとスコアレスドローに終えた試合後、サガン鳥栖の選手の中でひと際悔しさを滲ませていたのが明治大から今季加入したルーキーの森下龍矢だった。自分自身に対する、悔しさと怒りと不甲斐なさと……ないまぜになった様々な想いを、放熱できずにいる様子だった。
――かなり悔しそうにしていたが?
試合後に聞くと森下は「悔しさしかないです。滲み出ているのかもしれないです。今もめちゃくちゃ悔しくって、いつもの自分とはちょっと違っています」と、やはり顔を赤らめ興奮気味に語った。
川崎相手に19本のシュートを放たれながらも無失点に抑えた。”普通”の選手であれば満足しそうだが、22歳の新人はその段階でのことには決して満足していなかった。
「一番は僕の無力さに気付いたこと。ルヴァンカップ(16日/対北海道コンサドーレ札幌/●0-3/88分まで出場)で『ちょっとやれるな』と思っていたんですけれど、一気に叩き落されたと言いますか、現実に戻されました」
長谷川竜也、登里享平という強力な川崎の矢が放たれるサイドでの守備をこなすという大役だった。よく耐えたとも言えそうだが……。
「いや。『際』で守ることは確かにできたかもしれませんけれど、僕のいいところは、守備も攻撃的に、攻撃も前へ。鳥栖全体がそこを目指しています。でも僕自身も、チーム自体も、それができませんでした」
森下は話しながら気持ちを整理する。
「悔しいと言いますか、それを通り越して、目から血が出そうです」
J1リーグの開幕戦は特別だった。昨季ルヴァンカップを制すなど3年連続で主要タイトルを獲得している川崎相手に「現在地」を思い知らされた形である。
ただ鳥栖の金明輝監督は「(システムなど)選手たちは勇気を持って新たなトライをしてくれた。しっかりトライしたことで分かったこともあり、この結果はポジティブに捉えています」と現実を受け止めていた。
森下も頷く。
「もちろん(この想いは)ネガティブではなくて、課題が明確になりました。逆に、しっかり我慢して失点ゼロで抑え、こうして勝点1を拾えるいいところは示せました。あとは攻撃をいかに自分たちで作り上げていくか。そこに尽きると思います。1節が川崎で良かったと思います」
こうして森下はプロフェッショナルとしての一歩を踏み出した。ただ決して華々しくはなく、道は続いているはずだが、茨(いばら)によって先は見えない。
「僕らしいJリーグデビューになったと受け止めています。本当に一番下のところなので、前を向くしかない。その状況を与えてくれたのが川崎さんでした。でも次、不落の要塞の駅スタに来た時には、負けないっす」
鳥栖は2月26日のルヴァンカップ横浜FC戦(19:00/駅前不動産スタジアム)を経て、29日にJ1・2節のセレッソ大阪戦でリーグ戦のホーム開幕(14:00/駅前不動産スタジアム)を迎える。ちなみに、川崎とのホームゲームは、12月5日の最終節に組まれている。
また新たに鳥栖のユニフォームがとても似合う、その背中を押したくなるタレントが加わった。
”サガンゴール”の声援を受けるナンバー28の森下が鳥栖の勝利のため、体を張り、人一倍汗をかき、どんな相手であろうと全力で立ち向かう。
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[取材・文:塚越始]